2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ガラスの向こう側の、真っ黒に酸化して朽ちかけた金属のような展示物を、熱心に眺めていた男性が、連れの女性に話しかける。「奈良時代、8世紀って、書いてあるけど8世紀なのに、こんなキレイな円形とか、どうやって作れんのかね?」8世紀といえば、西暦700…

歯医者

歯科医院に行かれる際は二階をお上がり下さいと書かれたすぐ脇の階段を上がると廊下の奥まった先の右手が入り口で、受付と書かれた場所で初診の手続きをして、歯や健康状態に関するけっこう細かい質問表みたいなのに記入して渡して、それで待合室のソファー…

大ガラス

先日紛失したiPhoneがいま、手元にある。親切な人が警察に届けてくれたのである。それで警察から電話会社を経由して、携帯電話拾得のご案内という連絡をもらったのが先週末のこと。受取りは平日のみとの事だったので、今日会社を午前半休して警察署まで行っ…

公衆電話

電車が駅に停車して、たくさんの乗客に押し流されるように僕も下車した。そのままエスカレータで上の階まで上がり、改札を抜けて、あたりを見回して公衆電話を見つけて人の行列から抜け出して、構内の端の方のだだっ広く閑散とした場所の一角にある電話ボッ…

曇り空の朝。直射日光の降り注いでない朝なんて、いったい何ヶ月ぶりだろうか。しかしいつもよりも空気がぼんやりと生暖かいような気がする。雨が降るのか。 夜は雨。駅について改札を抜けたら、しっかりと雨が降っていて、駅前の道路が黒く濡れていて店のネ…

レイジング・ブルの妻

久々にツタヤに行った。映画は観ると二時間かかると思うと、億劫で最近なかなか観る気にならないのだが、久々にDVDの棚を眺めていたらちょっと楽しかった。西部劇のコーナーとか、有名な映画が並んでいるけどパッケージとかが新しくなったヤツも多くて、それ…

店仕舞

眠りから覚めると、すでに暖房は切られていて部屋が冷えきっている。僕以外にはもう誰もいない。皆、どこへ行ってしまったのか。さっきまでの賑やかさが嘘のように、しんとして物音ひとつせず、照明は全部消えていて薄暗く、窓の外がかえってうす青く光って…

長谷川

長谷川お前は、神様を信じているのだろうか。 キリスト教を信じている?長谷川。クリスチャンの。長谷川はいったい何を信じているんだろうか。 長谷川は、キリスト教を信じているのか?キリスト教を信じるって、言葉がおかしくないか?キリスト教を信じてる…

眼球

眼球を、人工的に作り出すのは、今の人間の技術ではまだ、到底できない事なのだろうか?レンズから集められた光の情報を電気信号に変換して脳に送るだけのことなんじゃないのか?…とか、恐るべき素人考えも甚だしい?まあ、そう簡単ではないのだろうし、簡単…

チームメンバー

雑沢弓一と、瀬中孝一郎と、あともう一人誰だっけ?ああそうだ、共修三太。この三人で分担して受け持つことになっている案件がこれだ。結構でかいよな。で、来月から吉春久井子と祖柄由愛香の紅二点が、こっちのチームに来て、この三人とどんな風に絡んでい…

iPhoneは便利

iPhoneは今日もいない。iPhoneが自分の足で歩いて家まで帰ってくることはまずないだろうから、僕のほうで仕事の後、何箇所か心当たりをたずねてみただけだが「いえこのあたりでは見かけませんでした」と言われて何の成果もなく、こうなるとさすがにもはや絶…

Don't Let Me Down

昨日から今日にかけては実に酷い目にあいました。iPhoneを失くしてしまって、タクシー会社とか駅とか色々問い合わせたけどダメで、警察に遺失物申請してきましたけどもしかするともう見つからないかもなあという気がします。 昨日は結構飲んでて、電車で西日…

報告

関連資料のフォルダ構成を変更しましたが、事前に調べているうちに気づいたのですが「99.その他」下にある「インフラ」というカテゴリが存在します。これはどういう経緯で作成されたのでしょうか?ざっと見た限り、この「インフラ」下はすごくよくまとまって…

リードオンリー

混雑した車内で前後左右に人がぎっしりの中で片腕を持ち上げて、親指と人差し指、中指、薬指で、まるでボーリングの球に指を入れているみたいな格好で読んでる途中の開いた本の下のところを支えている。自分の顔の目前に、まるで指揮台の上の楽譜にように本…

目を瞑る

電車で座席に坐ると、睡魔が襲ってきてたちまち意識がなくなる。気付くと寝てしまう。後になって、あれ?今寝てた?と思うくらい唐突に寝る。開いた本の同じページの行頭の数文字をさっきからずーっと見つめている。見つめているつもりで、目を閉じて寝てい…

二十歳

一九九一年の六月が来たら僕はついに二十歳になる。二十歳だからといっても、別に今までと何も変わらないとは思うが。バイト先ではなぜか、十九歳は僕だけしかいなくて、十八歳が五人くらいいて、あとは二十歳と二十一歳が多い。厨房のあの眼鏡の人は二十二…

寒さ

猛暑。炎天下。すさまじい暑さ。セミの声。もえたつ緑。陽炎で視界が揺らめいている。直射日光を受けた皮膚が焼付きそうだ、と書いても意味が逆なだけで気分としてはあながち間違っていないと思われるほど、今日は極端に寒かった。身体に直接圧し掛かってく…

白日

昨日も今日も素晴らしい快晴。激しい光の直撃。通りを歩いていても視界に入るほとんどの事物が白く光ってしまっていてほとんど何も見えない。自分が移動するたびに飽く事無く盛大に明滅し続けるストロボ。なにもかも自ら発光して己がかたちを失っているよう…

団地東通り

近くのスーパーで買い物して、家に帰るまでの5分か10分歩く道で、左手に見える古くて薄汚い感じの、いつ見ても営業しているのかしてないのかわからないようなカラオケボックス店の入り口のドアの脇に、風雨に晒されたまま何年も経過してほとんど脱色して部分…

中目黒の光

日比谷線の恵比寿を過ぎて終点の中目黒に向かう途中で電車は地下から地上に出る。僕は十二月から毎朝同じ時間にこの電車にのっているが、憶えている限りここ1ヵ月の間、地上に浮上した瞬間のものすごくまぶしい朝の光が車内に差し込んでこなかった日は、おそ…

今泉

今泉が近づいてきて坂中の席まで来て「今日忙しいの?」と聞いた。坂中はモニタを見ながらキーボードを叩いていて今泉の顔を見もせず「そうでもない。」と答えた。今泉は「今日飲みに行く?」と誘った。坂中が黙ったままなので今泉はしばらくそのままでいた…

遊園地

遊園地という場所は、遠くから見れば観覧車とかジェットコースターとかが折り重なるように見えて全体的に発光しているようで、すごく楽しげでうつくしく華やかな感じに見えるものだが、実際に敷地の傍を歩いていると、目に付くのは雑草の生えた地面からいき…

中目黒の朝

日比谷線の終点。この電車の終点です、中目黒止まりです。電車はこの後、車庫に入ります。どなた様もお忘れ物ないようご注意下さい。回送電車となります。お忘れ物ないようご支度下さい。ドアが開き、異常に冷たい風が直接車内になだれ込んでくる。同時に空…

受読

今日は一日、本を読んで暮らした、といったような感じの一日にしましょうとなって、食べ物は色々あるいただき物や冷蔵庫の残り物とかを食べて、酒ももらい物がいっぱいあるのでそれでだらだらしながらずっと寝そべって読書でもして過ごしましょうということ…

裏の畑

国道沿いの、見渡す限りどこまでも畑が広がっている広大な地平の真ん中に用水路が通っていてほんの少しの水が底を黒く湿らせているが側壁に貼り付いた水藻や苔は完全に乾ききって冬の風に吹き晒されている。その溝に平行した、何十年も前のでこぼこしてとこ…

初夢

昨日は食べすぎ呑みすぎでもはや活動不可能な感じだったので早く寝た。布団の中で肩から背中から、足のつま先にかけてまで、身体を一本の線みたいにまっすぐにして、真上を見上げて、そのまま目を瞑って、そのまま眠りに落ちるのを待っていた。頬の表面に感…