2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ほとりの朔子

深田晃司「ほとりの朔子」(2013年)を観る。今日のNHKの紅白歌合戦の司会をしていた二階堂ふみは、すらーっと手足の長いきれいなプロポーションで洗練されたドレスを着こなしていたけれども、本作主演時の役者としてはまだ若干の幼ささえ感じられる雰囲気。…

さすがに休日出勤感百パーセントな一日。月曜や火曜時点ではそこまで思わなかったのだが、さすがに今日だと電車までが休日ダイヤだし、臨時通用口からしか会社に入れないし、出勤者も数えるほどしかいないし、その数えるほどの人たちさえやることが限られて…

荒木ファン

ウィキペディアによれば、荒木飛呂彦が「バオー来訪者」をジャンプに連載していたのは1984年の45号から1985年11号までの17週で、当時中学生だった自分が「バオー来訪者」をはじめて読んだのは、すでにバオーが敵の本拠地に乗り込もうとする段階だったので物…

深田特集続き

昨日観た深田晃司「海を駆ける」(2018年)は、自分にはいまいちよくわからなかった感じ。ディーン・フジオカ演じる謎の男が、あまりにも超能力者すぎるというか、キリスト並みに奇跡起こし過ぎというか、あそこまで行くとほとんど救い主みたいになってしまい…

地図にしたがう

美容師のMさんはグーグルマップなどスマホアプリの地図を見るのが苦手とのことで、そういうので目的地を目指しても絶対に道に迷うのだそうな。あれだと、どこが目的地でどれが自分なのか、見方がわからないとのこと。いや…そういう人って、たまにいるよね。…

ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z

今回の第15弾は高野山詣の入り口である和歌山県の高野口駅をスタートし、チェックポイントである賢島、湯の峰温泉を経由し3泊4日でゴールである紀伊半島の最南端、潮岬を目指します。旅の途中には世界遺産・熊野古道や熊野三山。そして人気の観光地・伊勢志…

シャッフル再生

音楽再生プレイヤーに搭載されているシャッフル再生の機能は、内部的にはどのように実現されているのか。単に乱数生成の関数を使っているのか、もしくは過去履歴をチェックして再生数の偏りを制御するような、あるいはお気に入りや人気曲などの属性を加味考…

支え

電車が混んでるときとか、会社の休憩時間とか、お店とかで間の空いた時間を過ごすとか、そんなときは、本を鞄から取り出すよりもスマホで読む電子書籍のほうが、ぜんぜん都合が良いと感じるようになってしまった。あと寝る前に読むときの本も、やはり電子が…

妹・火薬

妹は僕より五つ年下で、生まれたのは一九七六年の七月である。僕と父は病院で生まれたばかりの妹をガラス越しに見た。そのときのことは今でもおぼえている。当時僕は五歳だから、まだ小学校に入学する前ということになるが、それにしては比較的鮮明な記憶と…

昭和住宅

一九七一年に生まれた僕のおそらく最古の記憶が、おそらく四歳前後に通っていた保育園の校舎と校庭の景色と、麦茶が入っていた透明の瓶と、やや不機嫌そうで怖い雰囲気の保育士女性の表情、それらの断片的な情景だ。あれは一九七四年か五年あたりということ…

フルデジタル

昨日だか一昨日だったか、NHK「浦沢直樹の漫勉neo」を見ていたら、ある漫画家が下書きからフィニッシュまでをフルデジタルで作画する現場の様子が定点カメラで捉えられていた。 デジタルのメリットの一つとしては要素の部品化があるだろう。髪の毛、服の皺、…

「よこがお」「東京人間喜劇」

日本映画専門チャンネルで深田晃司「よこがお」(2019年)を観る。甥が少女誘拐の罪で逮捕され、叔母の主人公も加害者の親族として世間から糾弾され生活や将来が崩壊していく、その過程の描写はやや図式的過ぎるし見ていて楽しいものでもないので、ちょっと微…

MOT

東京都現代美術館で、石岡瑛子「血が、汗が、涙がデザインできるか」と「MOTコレクション 第2期 コレクションを巻き戻す」を観る。石岡瑛子展の方はまるで「資本主義を闘う女武将」が、凄い圧でグイグイと迫ってくるようで、おどおどと周囲を見回しつつ各展…

一つの脳髄

小林秀雄の短編「一つの脳髄」における風景描写の冴えわたったすばらしさ。「私」は船に乗って移動し、自動車で旅館に赴き、食事をして、風呂に浸かり、浜辺の汀を散歩する。乖離的で離人的なあやうい感覚、景色と私が、密接であるようには思われない、私は…

禁句

昨日の、白銅貨が出てくる物語が何だったのかがわかった。新見南吉「手ぶくろを買いに」で間違いないだろう。青空文庫にあったので確認した。物語はまったくおぼえてなかったが、白銅貨にまつわる箇所は、当時受けた印象の記憶をおぼろげながらよみがえらせ…

白銅貨

白銅貨とは今ならつまり百円硬貨であり、もっと昔であれば五銭とか十銭硬貨である。そのことをじつは今日ネットで調べて、はずかしながらはじめて知った。それまでの自分は白銅貨について、ぼやっといいかげんな、自分なりの思い込みで想像したものでしか認…

ゲンロン戦記

東浩紀「ゲンロン戦記」を読んだ。会社組織における経理・事務。すなわち間接業務の重要性とリスク…。こういう話を「そんなのは当たり前だ」「稼げばいいのだ」などと簡単に言い切れる人は少ないはずで、少なくとも零細・中小企業における重要情報がその一点…

ウィズ・ザ・ビートルズ

村上春樹「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」への保坂和志による批判について13日の三宅さんが書いてることは、自分がちょうど一年ほど前に聴講した「小説的思考塾」で語られたことだと思うのだけど(他の何かの媒体にも書かれていたのかもしれない…

もらとりあむタマ子

Amazon Primeで山下敦弘「もらとりあむタマ子」(2013年)を観る。山下敦弘作品を観るのはすごく久しぶり。そして面白かった。この監督の仕事のまさに最良な部分という感じだった。前田敦子はどの作品を見ても、どこに位置付くのかどこに着地するのかよくわか…

大掃除というほどでもないが、ふだんあまり見向きもしない棚の奥など、色々整理していたら、昔の写真やら郵便物やらがいっぱい出てきて、その手のものは一か所にまとめてあると思っていたのだが、ふいにこうして未発表テイクみたいなのが思いがけずあらわれ…

年月

自分が高校生だったのは一九八七~九年だが、RCサクセションは一九七〇年にデビューしていた。日本にも昔から活動しているバンドはあったが、ロックバンドが十五年以上も続いているのは、その当時では珍しかったはず。とはいえ長い不遇時代があるので十五年…

葉子

大岡昇平の「花影」に、坂本睦子というモデルがいるというのは知っていたが、ウィキペディアで見たら驚いた。なんと大岡昇平自身の愛人だったのか。で、他登場人物もそれなりにあてはまるモデルがいて、さらに小説の発表後は、色々と物議を醸したり色んな人…

開発部署

自社で開発仕事してるのってどんな感じだろうか。僕も何十年か前はそんな部署にいたこともあったのだけど、今やもうすっかり、そんな仕事の仕方を忘れてしまったよ。久々に他所のオフィスを覗いたら、まるでコンビニのように煌々と明るい照明の下、真っ白い…

武蔵野夫人

夫がいて、妻がいて、隣近所の夫婦がいて、あるとき若い甥っ子が居候でやってきて、甥っ子と奥さんが惹かれあって、ふたりの関係を疑ってる夫は嫉妬のあまり、なぜか隣の奥さんに手を出そうとして、隣の奥さんは二人が惹かれ合ってるのにあてられて、甥っ子…

雨のニューヨーク

先日観た「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」には、ほぼ金持ちしか出てこない。アリゾナの田舎娘は最初は可愛くチヤホヤされるが、しまいには半裸にされて酷い目に会って、最後は主人公からも捨てられる。登場人物としては完全に悪意の餌食な感じ。金持ち…

冬の公園

中川から支流の大場川へと、ひたすら川沿いを歩き、やがて水元公園に着く。見上げると、青い空をバックにメタセコイアの朱色がきれいに映えている。柱のようにまっすぐ立ち並ぶ幹の間を抜けて歩くと、特有の香りが立ち込めているのがマスク越しでもわかった…

冬雨

おそろしく寒い朝で、しかも雨だった。よりによってこんな悪天候の早朝、健康診断に出掛けるはめになる。まるでボロイ折り畳み傘のように折れかけた心を、かろうじて抑えつつ、駅までの濡れた道を歩く。 検診は予想よりもかなり早く終わったので、朝九時半に…

呑まない生

お酒を飲まない日は、一年のうちほぼ一日だけであり、その日が今日で、なぜなら明日が健康診断だからだ。だから会社を出て帰路に着く途中の現時点における自分は、ほとんど去勢されたかのような、かつての人間に許容されてたいはずの基本的人権の大部分がす…

堅気

バーのホステス、つまり堅気じゃない女であるが、男が身勝手に夢想しているそういう女のイメージを「花影」の葉子は体現しているというか、葉子こそがそんな女のイメージの原基になっているのじゃないかとも思う。しかしそれを心の奥で求めるのは男ではなく…

花影

大岡昇平「花影」を読む。1961年刊行。今読むとむしろ新鮮に感じられるような、完全な三人称視点、各登場人物たちについてきっちりと説明する上位視点のありよう、「…だった。」「…のである。」的なわりにくどい感じもする説明の連続。しかし葉子の、客と軽…