2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

アレルギー

昔の病気と今の病気は違う。医学の進歩ということもあるだろうが、そもそも昔は無かった病気が今はたくさんある。アレルギーというのは、昔もあったのかもしれないが、それでもこれぞ現代ならではの病気であろう。神経が誤作動を起こすというのは、神経も昔…

日本三文オペラ

1959年刊行の開高健「日本三文オペラ」を、三分の一くらいまで読んだ。不潔さ、不衛生さ、悪臭、泥と汚穢、廃墟と瓦礫、それらが何重にも折り重なって分厚い層になって何やら怪しげな模様を描いたその上に各登場人物たちがべったりしゃがみこんで各自夢中で…

血は嫌いなので、健康診断で採血されるときは決して患部を見ないし、外科手術や出産などの映像など直視できないし、刃物で怪我するなんて、想像しただけで震え上がる。そんな自分でも、出刃包丁を買って魚を三枚におろしたいと考えるのだから奇妙な気もする…

暗夏

ここ何年かを思い返してみても、これほど雨と曇りがくりかえし続く夏は、久しくなかったような気がする。毎年のあの、うんざりするような蒸し暑さを、今年はまだ数えるほどしか味わってない。もしかすると今日の時点で、たったの一度もないかもしれない。日…

名前

バンドとか、チームとか、会社とか、ペットとか、子供とか、そういうものたちに、名前を付けるということを、もう久しくやってない。コンピュータ名なんて、名付けとは言えない。毎日書くブログの題も、それを名前とは思わない。名前を付けるべき何かに出会…

日比谷・虹

今日も昨日と似たような天候。空は晴れているのに、雨がざーっと降って、やがて上がった。日比谷公園はほとんど人がいなかった。濡れた路面や木々が、午後三時を過ぎのかすかに翳りを含んだ太陽の光を反射しはじめた。雨上がりで、まだ明るさを残しつつも、…

MOT新所蔵品他

東京都現代美術館で展示中のコレクション展を観に行く。新所蔵作品として末松正樹が展示されてるらしい。末松正樹は1908年に生まれて1997年に亡くなった。戦前から渡欧し、1944年フランスのペルピニアンにて抑留され、46年帰国する。会場に展示されてたのは…

真面目

僕がまだ小学生のとき、親や教師は常に「真面目」に「やるべきこと」や「考えるべきこと」を押し付けてくる存在だったので、その手の大人たちが時折見せる、いつもと違う振る舞いや態度というものに出会ったとき、それは常に新鮮に感じられた。今でも記憶に…

創作

乗代雄介「ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ」は650ページもあって、外に持ち歩くのが躊躇されるほどの分厚さなのだが、結局毎日持ち歩いている。この本ははじめから380ページくらいまでが「創作」で、十数年分くらいの期間で主にブログに書かれた短編…

ワインディング・ノート

今週はじめから乗代雄介「ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ」を読んでいる。650ページもある分厚い本。まずは後半に収録の"ワインディング・ノート"から読む。僕がこの文章をはじめてブログで読んだのは2018年の冬だが、そのときも感じたけどこの文章は…

ぎんぴら、サメ

ぎんぴらという料理が、うちではよく食卓にあがるのだが、これが、おお…と唸るほど、美味しいのだ。つくり方はとても簡単、いんげんとアスパラとピーマンを切って、ごま油で炒めて塩胡椒をふるだけ。それだけなのに、もはやほとんど完璧な野菜料理ではないか…

名前

「うっかり人生がすぎてしまう」ことを自らに許さない、そんな気概をもって生きているか?と言われたら、そうでもないと答えるしかない。いや、べつにそんなこと思ってたわけではないでしょ、無理矢理書いているから出てくる言葉の可笑しさ。 名前を付けると…

身振り

鯵を捌いているとき、うつむいてまな板の上で包丁をあつかっている、その行為に集中している自分がいる。それ以外のことが完全に頭のなかから消え去っている。まるで子供の頃みたいな集中力でことにあたっているのが、妙に滑稽な気がする。最近の自分の人生…

Outdoors

朝から降ってた雨が上がったようなので、急いで図書館へ行くが、着く間際にまた降ってきたので、結局傘をさす羽目に。座れる場所が制限されているせいか、最近の図書館はいつも人が少ない。書棚の前で長々と立ち読みして、何も借りずに出る。建物を出たら雨…

ブイヤベース、ヴィレッジ・バンガード

なぜか不意に「ブイヤベース食べたい…」と思った。一度そう思ったら、もうその考えが頭から離れなくなってしまった。どうしよう、会社を出たら、帰りに食材を買って、家で作るか、でも今日はそんなに早く会社を出れないだろうし、帰宅してあまり遅い時間から…

完成品

絵でも小説でもそうだが、完成品というのはいつでも「すごい」「なぜこれが実現出来たのか」と言った驚きと「まあ、こういう感じだろう」「驚きはない」「わかる」と言った安心というか退屈に近い思いと、それが同時に去来する。誤解を避けるために付け加え…

浦島

まだ僕が生まれてない頃の話です、さっぱりわかりません、とか言って誤魔化そうとしたが、悪いけど君に確認してほしいと言われて、仕方なく埃だらけの倉庫の奥に踏み込んだら、はたして言われた通りそのサーバー機はいまも存在していた。まるで漬物石のよう…

事務屋

「黄金列車」の登場人物たちは、お宝を奪おうとする有象無象から「事務屋め!」と罵られる。官吏、事務屋。軍人とはまるで違う職業、制度の元で、粛々と業務をこなす、制度の歯車、制度そのもの、制度の運用継続のために、機械のように仕事をする。彼らは管…

夜の雨

土曜日の夜だったか、寝るまでの時間、窓を開けたら風が入ってきて、レースのカーテンが大きく持ち上がり丸く膨らんで、すぐに吸い込まれて網戸にぴったりとへばりついた。部屋を風が、波のように行き来しているのだった。気温は肌に涼しく快適に感じられた…

ウズベキスタン・台北・イギリス

黒沢清「旅のおわり世界のはじまり」(2019年)をDVDで観る。ウズベキスタンでのオールロケ作品とは予想外で驚いた。主人公はスタッフとともに海外を取材中のテレビレポーターで、けっこう内向的で非社交的な感じ、周りのスタッフもわりと冷たくて他人に無関心…

慶州 ヒョンとユニ

A PEOPLE作品5本、1,800円で3か月間見放題! http://www.uplink.co.jp/cloud/features/2693/ で、チャン・リュル「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」(2014年)を再見。去年吉祥寺の映画館で、はじまった直後に寝落ちして中途半端にしか観てなかった映画で、こ…

ウロコ

先週の店に行って、お裾分けいただいた鰺と鯖のお礼を言う。しかしあれだけの切り身を一日か二日で食べきるのは大変なことだし、そんな一気食いみたいな食べ方をしては勿体ないので、ふだんの下処理にせよ今回みたいな棚ぼたのいただき物にせよ、保存方法を…

表情

ものんくる 無観客配信LIVE「LIVE FROM NIHONMONO LOUNGE」を観た。ドラムは打ち込み、これまでとは少し違ったアレンジ、音数控えめ、楽曲の骨格がより浮き出たようなシンプルな印象、そんなバックトラックに乗るボーカル吉田沙良の、なぜかちょっと煤けたよ…

娯楽作品

たとえば、ナチスが諸外国やユダヤ人から奪った金品、美術品、宝飾品、家具調度品、その他が、幾つもの倉庫に積み上げられている。毎日のようにトラックがやって来て荷物を下ろしていく。それらが何十両もの貨物列車にぎっしりと積み込まれる。貨物車は延々…

黄金列車

佐藤亜紀「黄金列車」を読み始めてしまった。1944年、ハンガリー帝国の官僚バログはナチスがハンガリーに貯蔵する物資を列車でベルリンまで運ぶ役割を請け負う。この時代のこの舞台設定、もはや超の付く娯楽作というよりほかない感じで、やたらと面白くて、…

小説のタクティクス

佐藤亜紀「小説のタクティクス」を読んだ。戦略(ストラテジー)と戦術(タクティクス)という言葉があり、戦略は長期計画、企画構想、おおまかな目的の提示を示し、戦術は戦略を実現するためのさまざまな施策ということになるだろうか。これを作品の「形式」「…

せんきょ

僕ら二人が並んで歩いている前を、僕らよりもたぶん一回りくらい若い夫婦が並んで歩いている。ご主人はパナマ帽をかぶっていい感じにヨレたアロハシャツを羽織って、裸足に草履履きな、下町の兄さん風でちょっとカッコいい。そして二、三歳くらいの子供を抱…

くるり、刃疵

くるりのドキュメント映像配信「[特Q]ツアー リハーサルの記録」を観る。ライブツアーのリハーサル風景を三十分くらいの映像で、頭から終わりまで聴けるのは冒頭の「Morning Paper」くらいで、あとの曲は途中ぶつ切りばかりで、しかも岸田の声は風邪のせいか…

待ち合わせ

ちなみに感染者今日もけっこうすごいけど、どうかね・・・ 今月は今夜だけにしますからーー!! はい、でも遅れますからね、すいません、これから向かいます。 了解です。Kさんも遅れるってさっき連絡ありました。 君もうお店着いてるの? もう席にいます。 …

捌く男

鯖はぜんぶ竜田揚げ、鰺もぜんぶフライにした。大量の揚げ物が、食卓にのぼった。すばらしい。壮観である。でもこんなにたくさん、絶対完食できないよね、そりゃでしょ、いいよ無理しなくて…などと言いながら、夫婦二人で相当食べすすんで、それでも多少は残…