2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

体育館

ワクチン接種会場として、選挙の投票会場として、あるいは災害時の避難先として、体育館をおとずれる、あるいはテレビで見る。 この先の自分だって、体育館に寝泊まりすることになるかもしれない。もしかすると体育館が、終の住処になるのかもしれない、そん…

他所

上野、御徒町なら、どの道でもだいたいわかる。渋谷は、わからない。さすがに、けっこう何度も行ってるけど、いまだにわからない街、という印象がある。横浜は十年通っているので、さすがにわかるけど、横浜駅と桜木町駅、あとみなとみらい、馬車道、その程…

さいきん画集で何か「これ!」と思うものを買いたい、買って自宅で閲覧したい…という欲望が継続しているので、大きめの本屋や古書店にいくたびにそれらを探しているのだが、なかなか思うようなものには巡り合わない。アメリカの20世紀抽象か、その周辺で、何…

紅葉

今年も少しずつ、紅葉してきたと妻がいう。そう言われてみれば、たしかにそうかもしれない。だって、ほら、あれ、あの木が、と言われると、ああなるほど、たしかにそうだな、と思う。あの並木がみんな、すこしずつ、きれいになってきたと言われると、ああ、…

新車両

最近あまり乗らないから、この前はじめて気づいたのだけど、日比谷線の新しい車両の座席は、やけに立派というか、肘掛で一人用に区分された席が、ずらっと並んだようになっている。同じく毎年、正月に実家に帰るときしか乗らないから印象にないけど、たしか…

ウィスキー

最近は、120mlくらいの小さな水筒に、バーボンウィスキーと少しだけベルモットとアンゴスチュラ・ビターズを加えたものを携帯している。毎夜、退社して帰路につく途中その水筒を取り出して、たいへんお行儀の悪い振る舞いであることは承知してはいるが、なる…

ベルヴィル・ランデブー

Amazon Primeで、シルヴァン・ショメ「ベルヴィル・ランデブー」(2003年)を観る。最後にエンド・クレジットを見て、いや、これで終わりかよ、ステージに立つ三人の歌を一曲聞かせろよと、この映画を最後まで観た誰もがそう思いそうだけど、いや、それでもま…

出空港記

深夜の空港で、お腹空きそうだなんてわかりそうなものじゃないか、出発時に少しでも食べ物を確保しておくとか、なんとかならなかったのか??などと、まるで自分のことのように、三宅さん日記の19日の最初の方を読み返したりする。その「不満感」は、三宅さ…

水際

三宅さんが上海の空港から目的地のホテルへたどり着くまでの、過酷きわまりない一夜の記録。三宅さんの日記に驚かされるのはこれがはじめてではないが、しかし今回もすさまじく素晴らしかった。固唾をのんで最後まで読んだ。 制度が決めた取り組みにしたがっ…

惑乱・キース・ジャレット

その永井荷風に「断腸亭日乗」と題する長年の日記がある。大正年間の、四十の手前から始まって、昭和三十四年の四月二十九日の、「祭日、陰」の一行まで続いている。その二十九日の夜の内に亡くなったらしい。ひとり暮らしだったので、翌朝になって人の知る…

楽器

ピアノが老朽化して傷んでくると、鍵盤がガタガタのゆるゆるになってしまって、弾くとピアノの音と鍵盤が下の台にぶつかう木の音が、ピアノ線の叩かれた音と重なって聴こえる、そんな状態のほとんど演奏不可能みたいな、まるで死骸のようなピアノを、子供の…

待合

上野駅の手前で電車が止まった。時刻はもう夜の九時過ぎで、乗客は少なくはないが座席はまばらに空いていて、立ってる人はほとんどいない。安全確認が終わるまでお待ちくださいとアナウンスされて、その後、とても静かになった。電車の中で、誰もが無言でい…

川火

佐伯一麦をはじめて読んでいるのだが、「日和山 佐伯一麦自選短篇集」前半のいくつかの作品の端々(とくに「川火」)から、古井由吉を読んでいるときにしばしば感じたことのある何かが、ここにも濃厚に漂ってるようで、そうか…あの「感触」って、これなのか…と…

ワウペダル

二十歳前後の頃、バンドの一員としてギターを受け持っていて、そのバンドは古い楽曲のカバーばかりをやる、六十年代ロックの形式と精神を強く志向する、つまりインプロヴィゼーションが長ければ長いほど良いと思い込んでいるようなたぐいのバンドだった。 当…

子供の頃、柿が好きではなかった。果物は全般好きだし、柿だって食べられないわけではなくて、食べれば美味しいとも思うのだが、なにしろ柿は、食べたときの当たり外れの差があまりにも大きすぎた。渋柿は論外だが、いわゆる熟柿も、嫌いだったし、今でも好…

屋形船と幽霊船

屋形船が魅力的なのは、たぶん屋形船に乗って飲み食いをすることの魅力というよりも、その船の上で人々が宴会をやってる、舟の上だけがまるで火で照らされてるみたいに明るくて騒々しくて、しかしその船が浮かぶ水の上は、夜の闇と同化してあくまでも暗くて…

鳥の博物館

我孫子市鳥の博物館に行った。鳥の標本がたくさん並んでるだけとも言えるけど、実際見ると、これが意外に面白くて、ずいぶん時間をかけてじっくりと見てしまった。 生涯のうちに、数万キロメートルも飛ぶ鳥がいる。何か月ものあいだ、一度も着地(停止)するこ…

島尾敏雄「出孤島記」では、自らの死を決定づけるはずの出撃命令が遂に到来せぬままとなり、次の「出発は遂に訪れず」で八月十五日の玉音放送を迎え、それまで疑いもしなかった、確定したはずの「死」が翻って、にわかに「生」の可能性が己の内心に広がると…

Out to Lunch!

ジャズにおけるアドリブと呼ばれるあの入れ物の中身、あの許容範囲、あの限られた自由、あのしきたり、あの追従、あの礼賛、あの服従。うつわと、その中身。どうしてもその枠組でしかない、そのあきらめから始まる。そのことへの屈服からはじまる。もし今の…

組織が個人としての自分に課す、目的や規則や命令が、個人を律してくれるものだというのは、僕も肌身で実感しているというか、それはよくわかっているつもりで、悲しいかな人間とは他所から目的を与えられなければ充実感も自足感も得られない存在であるとい…

島尾敏雄の空間

島尾敏雄「出孤島記」の主人公は、ベニヤ製の一人乗りボート船頭に爆弾を積んで、それで乗船員もろとも敵艦に体当たりする特攻用舟艇乗組員たち数十人の部隊を率いる隊長である。南の小さな島の入江に拠点を構え、本部から出撃の命令が下るまで待機を続けて…

老爺、老婆が一人、あるいは夫婦で住んでいた一軒家が、いつの間にか忽然となくなってしまい、きれいな更地になって、その後まもなく、分譲住宅の売り出し開始になったり、マンションの建設計画がはじまったりする。あの爺さんも、あの婆さんも、どこかへ行…

Walls & Bridges

上野の都美術館で「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」を観る。最初の展示室で、ジョナス・メカスが(2000年)に制作した四時間以上にもおよぶ映画作品が上映されている。たぶん二十分かそこらの時間を観ていただけだが、これだけを全編観る目的…

核マネジメント

今住んでるマンションの部屋の、水回りとか、壁とか、あるいは、昔から使ってる財布とか、キーケースとか、靴や鞄とか、何もかも、経年劣化していくもので、最初はきれいだったものが、いつまでもそのままであるわけはなく、少しずつ汚れて、色あせて、やが…

レコードショップ

べつにその気もなかったのだが、なんとなくふらっと、横浜西口のユニオンに寄ってみた。いったい何年ぶりだろうか。もしかすると十年ぶりとかだろうか。たしかあのビルだと思って歩いていくと、たしかに看板が出ている。そして、ビル脇にある狭い非常階段を…

借家

少しずつ読み続けていた色川武大「狂人日記」も終盤が近づいてきて、五十過ぎで病院から出てきた主人公が女性と一緒に小さな八畳一間でまがりなりにも新しい生活をはじめるために、色々思いを巡らせながらもとりあえず頑張ろうとする展開にきて、ああやっぱ…

一九六九年の大晦日の夜

つまり、年齢を経た私はもう、過去に録音された音源を聴くことで、そこにはっきりとこの当時、一九六九年の大晦日の夜を感じているのだ。それは高校生のときには無理だったけど、今はできる。一九六九年というものの実在をイメージできるようになったという…

二度咲

9月上旬に開花して「今年は花期が早かった」と思っていたキンモクセイですが(その時の様子は下記ご参照ください)、第二波のようにまた花が咲いています。花のつきかたを見るとこちらが本波のようです。気候が不安定だと、植物の動きも揃わなくなってしまい…

あまり面白いとも思えないが、それなりに展開していこうとする気配が漂ってきているので、それになかば無理やりに身体ごと引っ張られてしまおうとするかのように、少し投げやりな惰性的な気分のまま、読みかけた小説の続きを読み進めながら、ああ今日の、こ…

Rise in the East

CRCK/LCKS ワンマンライブ"Rise in the East"の配信を観る。ギターの井上銘が、このライブをもって脱退するとの話だったのだけど、なんとステージ上で本人が「やっぱりやめるのをやめます」と言って脱退撤回という、ちょっと他所ではあまり見たことがない展…