2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

コート

春物コートを羽織る。このコートも、もう捨てなければ。あまりにも古くなりすぎた。それにしても、ハーフコートしか持ってないではないか。昔は、長いコートを持っていたこともあっただろうか。いや、思い出した、今でもある。クローゼットの中に、あるはず…

目を瞑って歩く

朝、駅までの道を、数えきれないくらい、毎日毎日、同じように歩いていて、これほど何度もくりかえしてきたなら、もはや目を瞑っていても、歩けるのではないか、いや、そうは思わない。さすがにそれは無理だ。家から駅まで十五分ある。十五分間、目を瞑った…

花弁

今朝は晴れた。薄手のコートで出掛ける。外階段はまだ濡れていたし、地面のところどころに水溜まりが光っている。夜から朝にかけて降った雨のせいで、散った桜の花弁が大量に落ちている。雪が降って積もりはじめたような地面の真っ白さ。これだけ大量に花を…

天気が崩れるとの予報を聞いたので、早めに買い物を済ませようと外に出たら、雨はすでに降りはじめていた。最寄りのスーパーまでの数分間、しっかりと本降りになった雨の中を歩くことになる。 しかも買い物を済ませてスーパーから出た途端に雨脚は弱まって、…

パッケージ

久々に神保町の古本屋街をうろついて、古本というのは今後もしばらくは廃れずに残り続けるだろうけど、中古CDとかDVDとかblue-rayというのは、いまさらながら、もう消えゆく商品なのだろうなとは思った。自分はこれまでの人生で経験してきた音楽、書物、映画…

ワイルド・スタイル

チャーリー・エーハン「ワイルド・スタイル」(1982年)をDVDで観た。これはすばらしい。グラフィティ、ヒップホップ、DJ、ブレイクダンスの黎明期が、ほとんどそのままフィルムに焼き付けられている感じ。 ウォーホルが「ポッピズム」にてリポートした60年代…

量感

今年の桜は、わりと長持ちしそうというか、触ってみるとけっこう硬くてしっかりしてるような、これならあと一週間くらい容易には散らない気がするのだが。夜の帰り道に見上げると、今日あたりがおそらくピークではないかと思うが、とにかくものすごいボリュ…

昼頃

正午間近か、ごく近所なのに、今まで歩いたことのない道だった。住所としては隣町になる。このあたり一帯、どこも似たような住宅地ではあるのだが、うちの近所とは何かがちょっと違う。見慣れた光景ばかりのようでありながら、どことなく違和感をぬぐえぬこ…

聞いて下さい

宇野浩二「蔵の中」の主人公は、これまで自分が所有してきたあらゆる衣類・家具・寝具・その他を質屋に預けており、しかもそれらが質流れしないように、なぜか定期的にきちんと利息金を払っている。ふつうに考えたら、貸金を返して質草を取り戻すか、流して…

蔵の中

宇野浩二「蔵の中」(1918年)を読んだ。なるほど…たしかに、これはすごい。救いようがないほどにダメダメな主人公のダメさを強調するために、意図的に弛緩させた行き当たりばったりな構成っぽい体裁にして、言いたいことだけをダダ漏れに書いただけ、みたい…

ジャック・ドゥミの少年期

Amazon Primeで、アニエス・ヴァルダ「ジャック・ドゥミの少年期」(1991年)を観る。ジャック・ドゥミという映画監督が作ったイメージとしての、ジャック・ドゥミ作品群がある。そのことに基づいて、本作で描かれる少年時代のドゥミを中心としたさまざまなエ…

演技

たまたまつけたテレビで、何とか賞の授賞式が放送されていた。受賞した俳優のよろこびの言葉と、それを祝福する共演者。客席からその様子を笑顔で見守る関係者たち。テレビカメラがとらえるたくさんの俳優たちの顔を見ていて、やっぱり葬式とか結婚式とかこ…

ディーセント

シンポジウムや講演会などにおける大江健三郎のトーク術というのは、けっこうすごい。すごいというのは、いつでも鉄板の笑いネタを、ほとんど三遊亭円楽なみの安定感をもって放つことが出来るという点ですごいのである。「あいまいな日本の私」を読んでいて…

春の絵

今の季節にハクモクレン、あるいはコブシの花が、満開で咲いているのを見ると、ゴッホの作品を思い浮かべたくなる。もっともゴッホが描いた白い花はコブシではないが、種類がどうとかではなく、いまの季節に植物がほとんど調子づくような旺盛さをもって活動…

夢の中

本を読んでいる。眠くなってくる。意識が遠くなり、しかしまた戻り、目が文字を追い、しかしまた意識が遠くなる。読んでいる箇所が、さっきから変わってない。同じ箇所を何度もくりかえしているようだ。あらためて、行のはじめから読む。だが大正九年には三…

修理工場

近所に、某外国メーカーの自動車を専門に扱うお店があって、といってもおそらく販売代理店とかではなく個人経営の修理・整備専門の町工場という感じなのだが、傾向としてややモータースポーツ寄りというか、レース仕様に近い整備を施すのを得意としているよ…

走り笑い

我々とすれちがった小学生くらいの女の子ら三人が、仲良さそうに、まるで絡み合うような体勢で、大きな声で笑いながら走っていく。何がそんなに面白いのかわからないが、三人が通り過ぎたあとでも笑い声が聞こえてくる。 あんなふうに大笑いすることなんて久…

雨翌日

水元公園まで散歩。天気晴朗なれども風強し。昨日も今日も、春の前触れが大気中にはげしく轟いてる感じ。強風が始終吹きつけているので、顔全体の感覚が麻痺するほどだが、寒いとは思わない不思議な体感気温の日だ。ユキヤナギ、コブシ、ハクモクレンの白さ…

友情

武者小路実篤「友情」を読んだ。一九二〇年(大正九年)刊行、今昔を問わず恋愛(片想い)こそ「症状」にほかならない。勝算のない戦いであるのは自明なのだが「病気」だから冷静な判断は不可能。若さゆえの狭量さ、自分勝手さ、思い込みの強さ、嫉妬心と自尊心…

会社の創造

何年かかったかわからないけど、気が向いたときに少しずつ読んでいた伊井直行「岩崎彌太郎─「会社」の創造」をようやく読み終わった。 あらかじめ作りたいものがあって、結果としてそれを作ることができた、あるいはできなかった、という話ではないというこ…

二十五年前

「大江健三郎 柄谷行人 全対話 世界と日本と日本人」を読んだ。九〇年代の対談が三つ。当時、大江健三郎六十代、柄谷行人五十代である。雰囲気はまさに「終焉をめぐる」お話…という感じで、もう世の中一区切りで、これまでの日本文学も終わり、文芸批評も終…

外出

去年もその傾向はあったけど、とくに今年に入って、我ながらおどろくほどどこにも出かけてない。今年も二か月半すぎたけど、見事なまでにどこにも出かけてない。竹橋に行ったくらいだ。あとはちょっと近所を散歩するくらい。美術館も、事前予約とか言われる…

群衆

安倍前首相が秋葉原で街頭演説する車の周りに、まるで戦国時代みたいにたくさんの幟を立てた群衆が取り囲んで、めいめい好き勝手に、大声でヤジを飛ばしまくって、叫び騒ぎ罵りあって大騒ぎしてる映像をテレビで見たとき、もしかして大正デモクラシー時代の…

数分

昨日も、今朝も、まとまりのない、とりとめのない夢を見た。 ずいぶん前の、もう何年も会ってない、今後も会う機会はないだろうと思われる古い知り合いが、なぜかそこにいる筈のない地元の友人たちと一緒にいる。知り合いが僕を見て、二人で先に帰らないかと…

スライド

ヴェンダースの映画「パリ・テキサス」をはじめて観たとき、ライ・クーダーによる音楽にかなりの衝撃を受けた。それは自分にとっては「戦メリ」をはじめて観たときの、あの音楽が映画に重なっている衝撃に匹敵するものだったとも言える。 ギターを「弾く」の…

サウダーヂ

空族「サウダーヂ」(2011年)面白かった。三時間もあったけど最後まで楽しかった。地方都市に暮らすそれぞれの人たちが、厳しい現実あるいは自らの苛立ちによって次第に追い詰められていく、仕事が減っていく焦りの中でタイパブのホステスと浮気する土方の兄…

雑誌

何十年ぶりになるかわからないが、久々にロッキング・オンの最新号をたまたま手に取って見たら、なんと表紙がジョニ・ミッチェルで、そのほかにピンク・フロイドとか、CSN&Yとか、クラシックばかりの特集が並んでいて、これ、ほんとうにロッキング・オンか?…

テレビを適当に替えてたら、98年ごろのフィッシュマンズが出ていて、それをぼんやりと見ていた。以下の番組でスタジオライブをやっていて、ああー時代だなあ…と思った。 https://www.spaceshowertv.com/sp/program/special/encorehour_fishmans202103.html …

大正百一〇年

「白樺たちの大正」を読んでいて、大正時代って、なんだったんだろう…と複雑な思いになる。学生および文学に身をやつした同人たちの白樺派周辺がかたちづくる状況があって、かつ同時代、米価格高騰に暴動を起こす農民がおり、日比谷公園周辺に群衆となって集…

オフライン

ネットワークにつながないWindowsなら、何年経とうが何も変わらず、電源を入れれば当たり前のように動く。まるで家電のようだ。アナログの音と映像を取り込めるようにしてあるので、もう十年以上使っている。古いパソコンの中を探っていると、ふだんは思い出…