2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ドライブ・マイ・カー(小説)

村上春樹「女のいない男たち」収録の「ドライブ・マイ・カー」を読んだ。僕はたぶん、村上春樹に対してある種の先入観をもっていて、「村上春樹的なもの」の嫌な感じ、鼻白む、辟易する感じが、苦手だと思っている。しかしこれは読んでみて、あまり「嫌な感…

ドライブ・マイ・カー(補)

「ドライブ・マイ・カー」について。部屋の中で、二人の裸体にあたる自然な光はきれいだったと思う。しかしこの映画の季節感は、よくわからない。西島秀俊も運転手の三浦透子も、服装はいつも一緒で、夏でもないけど真冬でもない格好で、西島が外で待つ運転…

ドライブ・マイ・カー

TOHOシネマズ 西新井で濱口竜介「ドライブ・マイ・カー」(2021年)を観た。 娘の死によって幸福を失った夫婦がいて、やがて妻も亡くなり、残された夫が、たまたま出会った運転手女子の過去の傷を知ることで、心の回復への糸口を見出すような、すごく「村上春…

お告げ

先々週くらいから、NHK「映像の世紀」の、録画したやつを少しずつ観て、最終回を今日観終わった。録画し損ねた4回目と5回目だけ観てないのだが、おそらく昔、一度くらいは観てるだろう。4回目と5回目のあたりは第二次大戦真っ盛りの頃で、観ていてけっこう辛…

ローテンション

夕方前の時間に、いつものジムに行って、しかし今日は水泳ではなくて、バスタオルをもって、風呂、サウナ、水風呂を往復した。ここに通いはじめて四年経つけど、来店したのに水泳しなかったのは今日がはじめてだし、いつもはシャワー室しか使わないので、浴…

Charlie Watts

チャーリー・ワッツ死去とのこと。ストーンズのレット・イット・ブリードをはじめて聴いたのは高校一年生のとき。CDというメディアが、世の中に出始めてまだ間もない頃だ。当時の自分にとって、古い音源を聴くというのは、まったく新たなフォーマットに乗せ…

受給

いますぐ受給か、繰り下げ受給かを、選べと言われた。繰り下げならば、十年後の払出しとなる。年利1.0%とのことでこのご時世ならさほど悪くないとも言えるので、ひとまずそれで手続きした。十年後なんて、さほど遠い先の話でもない。今から十年前のことを思…

老婆

齢八十くらいだろうか。老婆、子供のように、小さな身体、この暑いなか、区民事務所まで、ひとりで歩いてきたのか。何か申請の用事か、窓口の人と、やり取りしてる。耳が遠いのだろう、何度も聞き直して、しばらく間が空いて、そのあと一言二言答える。窓口…

良い箇所

小説内の2、3ページにわたって書かれているある出来事がたいへん良くて、このことを文章でここに書きたいと数日前から思っていたのだが、上手く書けない。こういうことが書いてあるのだと、要約することができないし、それの何が良いのだと説明することもで…

夏休み

こうして、すわって、ビールのんで、窓の外は晴れたり曇ったりで、テレビでロックフェスの映像がえんえんやってる、このとりとめのない、だらだらとした、ただ色合いが変わっていくだけの時間が流れるのが夏だ。そういうのを、満足しながら味わうことが、意…

犬や猫が死ぬのを見るのは、かわいそうすぎて耐えられないけど、馬もそうだ。馬の死ぬ瞬間を見たことは無いけど、映画や小説で、馬はしょっちゅう死ぬ。馬はじつに気の毒だ。馬は戦争のときに駆り出されるから、どうしても危険な場所に連れて行かれて、人間…

腕時計

腕時計を見るという仕草は、高校生あたりから自分の振る舞いとして自然に身に付いていたはずで、時間を知りたければ無意識に腕時計の盤面を確認するのが当然だった。それでたぶん、最後に使っていた腕時計が壊れたのが十年ほど前だと思うが、それ以来ずっと…

耐久

先週からクロード・シモンの「フランドルへの道」を、ゆっくりゆっくり、一行ごとに、誰が誰に何を言い、何を思い、その場所がどこで、彼らがどんな位置にいて、視点はどこで切り替わり、このあとどこへ場面が移っていくのか、それを一々、可能な限り把握し…

OR

ダムタイプは実際の舞台上演を観たことがないし、映像記録でも「OR」までしか観ていないので、正直いろいろ語る資格もないようなものだが、VHSの「OR」を久々に観た。 「pH」や「S/N」もそうだが、ダムタイプは冒頭でいきなり強烈なインパクトがある。最初の…

技術

ダムタイプ関係者のインタビューには裏方スタッフ特有の技術話が多いが、どれも大変興味深いものだ。とにかく当時、編集がリニアからノンリニアへ変わるということと、映像、音楽、照明が同期するということが、ものすごく画期的なことだったというのがリア…

素人

ダムタイプの中心には、古橋悌二がいて、高谷史郎がいて、音楽が山中透で「S/N」以降は池田亮司、ときには工学系やプログラミング出来る人間の協力も得ながら、錚々たるメンバーで、あの作品群を作り上げてきた。これだけ凄い人たちが、ある時ある場所に集ま…

pH

「S/N」のサントラを久々に聴きながらダムタイプについてネットで見ていて見つけたインタビューが、たいへん興味深くて、何度か読み返してしまった。 https://simokitazawa.hatenadiary.com/entry/00001205/p1https://rittorbase.jp/event/24/ そういえば、2…

マリヤのお雪

VHSで昔買ったまま観てなかった溝口健二「マリヤのお雪」(1935年)を観る。 西南戦争の時代、戦火の迫る土地から逃れようとする薩摩地域のお金持ち家族と二人の娼婦(?)が、乗り合い馬車に同乗する。原作はモーパッサン「脂肪の塊」で、これを元に作られたも…

私は黄色です

私は悪人です、と言うのは、私は善人です、と言うことよりもずるい。私もそう思う。でも、何とでも言うがいいや。私は、私自身の考えることも一向に信用してはいないのだから。…という、坂口安吾の言葉がある。 私が「私は悪人です」と言うのは、内なる悪を…

書込み

本を読んでいて、ページ端や気になった箇所に付箋を貼るのはたまにやっていたけど、本にもよるけど、最近は付箋ではなく、鉛筆でページ内のところどころに、書き込むようにしている。先端を尖らせたHの鉛筆で、弱い筆圧で、読んで思ったことや、ここは重要だ…

感想文

小学四年生の姪の子が書いた読書感想文を読んだ。なんか、けっこう上手く書けてるので、かなり手伝ったでしょ?と妹に聞いたら、それなりには手伝ったとのこと。しかし大まかな構成や論旨自体は本人によるものだそうな。それで改正前の、姪による初稿オリジ…

確率の外

ワクチン接種で副反応が出るかもしれないとして、それは確率の問題になる。確率という世界に閉じ込められるのを嫌う人は少なくない。僕もそうだ。ある条件下で、不運な人が避けがたくあるとして、それに該当する可能性は自分にもあるということを、ふだんは…

人物

ある人間を夢見て、それを現実へ押し出そうとするときに、まずは心臓を思い浮かべるところから始めて、周囲の器官もつくって、手足や胴体が出来て、いちばん手間が掛かったのは、頭髪の一本一本を仕上げていくことで、やがて全身が出来上がったけど、その登…

雨と鶏

空は晴れてるのに、何の前触れもなく、あまりにも突然の雨が降り出した。玄関を出た直後に、まるで図ったかのように、地上数センチがくまなく白く煙るほどの勢いで、ざあざあと降る中を歩き出した。打ち付けてくる雨の力が強くて傘が重い。あたりにはなすす…

異形の者

武田泰淳「異形の者」を読んでいて、途中の箇所で、あ、これは…と思って調べたら、石原慎太郎「太陽の季節」の、有名な男根での障子突き破りの場面は、どうやらこの作品から着想したものらしい。まさに読めば誰でもすぐにわかるサンプリングの元ネタ、という…

円環の廃墟

ボルヘス「円環の廃墟」を久しぶりに読んだ。 主人公である彼は、まがりになりにも何かを作ろうとしてそれを試す。彼が円環構造の世界にあったとして、しかし、何かを作り出そうとするその挑戦、それは少なくとも彼にとって、まったく未知な、初の試みである…

流人島にて

武田泰淳「流人島にて 」が面白かった。A丸、H島、Q島、とか伏字が満載で、それだけである種の感じというか、この作品が発表された当時(1953年)の感じ…というのは、読み進むうちにわかってくる。今読むと、ほとんど二十世紀エンタメ活劇の面白さという感じだ…

思い込み

いつもより少しだけ「現実」を感知すると、心身はそれに耐えられなくなり、途端に不調をきたす。おそらくは、そのはずだ。いつも心のどこかで惹かれている何か、ほぼ起伏のない穏やかで始まりも終わりもないようなあの感じ、なつかしくもあり、おそろしくも…

ブックオフ

会社の帰りに、横浜のブックオフに寄ってみた。さすが都会のブックオフだな…と思った。八時閉店で七時五十分に行ったので、ほとんど見る時間無かったけど、本だけでなくてCDやらゲームやら何やら、サブカル・ホビー系のありとあらゆるものがフロアに所狭しと…

サイズ

先月買ったシャツは、サイズを細かくオーダー可能な仕組みになっていたので、出来上がったものを実際に着てみると、首回りや肩幅やバストウエストの感じはかなりフィット感があって良かった。ただし腕の長さが、これは自分固有の問題として、僕は右腕と左腕…