2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

朝の負荷

最近、お酒から身体が受ける負荷について意識することが多くなった。すこしのみ過ぎると、翌朝にはっきりとダメージを感じるようになった。 酔いが残っているというのではなく、強い睡眠不足感をともなった目覚めになる。眠っていたはずなのに眠りの質がいち…

セヴンティーン

大江健三郎「セヴンティーン」(1961年)を読み返した。これを書いていた時期の大江健三郎はまだ二十五歳。たしかにその年齢の作家に特有な性急さというか、あたえられたモティーフから素早く必要最小限な造形を加えて仕上げる勢い重視の作品という感じもする…

野毛山

きのうは、久々に野毛山動物園に行った。前回来たのをまるでおぼえてないのだが、この日記によれば今から十二年前のことらしい。その当時と今との違いとして、惹きつけられる対象が、思うに最近はまず、ほぼ鳥類ばかりになってきたと思う。もちろん猿もキリ…

無解決

横浜、弘明寺のGoozenで、Goozen meet me シリーズ#1 井上実×白田直紀展 ときのげ ―時間外― を観た。 マティスの絵を観ていても思うことだが、絵には解決がない、小説や映画のようにラストが用意されていない。しかし見始めることは出来る。その絵を特定し…

RNG寿司とマーメイドそしてパクチー

有給休暇を取得したが、酷い雨の一日。それでも昼から酒をのむために、すし屋のカウンターに座った。雨が土砂降りのせいか、自分以外に客はいない。開けっ放しのドアの外を見てると、雨に叩かれた路面の匂いが、ここまで漂ってくるようだ。雨を吸って全身が…

大江健三郎が「懐かしい年への手紙」に書いていた、「二階が大きい図書室となっている広い建物の、油を塗った板床の匂い」について、ずっと気に掛かっている。朝鮮戦争中であるから五十年初頭の頃、それは「あきらかにひとつのアメリカ体験だった」と書かれ…

東海道四谷怪談

Amazon Primeで中川信夫「東海道四谷怪談」(1959年)を観る。蚊帳というものから感じさせる不気味さ、薄暗がりの向こう側の怖さみたいなものが効果的に活用されているのかな、と思った。薄緑色の、とてもきれいな蚊帳のなかに病身のお岩が寝ていて、その向こ…

淀川長治

フェリーニ「ジンジャーとフレッド」のDVDには、淀川長治の解説が収録されていて、これがいかにも淀川長治な文章で面白かったので、ひさびさに淀川長治の著作にあたりたく思って、と言ってもいま手元にあるのは共著の「映画千夜一夜」だけなので、先日図書館…

私は会いたかった

フェリーニ「ジンジャーとフレッド」の後半、停電したスタジオ内の暗闇に包まれたステージで、ジュリエッタ・マシーナはマルチェロ・マストロヤンニに、テレビ出演を承諾したのは孫にせがまれたからというのは嘘で、本当の理由は貴方に会いたかったからだと…

ジンジャーとフレッド

DVDで、フェデリコ・フェリーニ「ジンジャーとフレッド」(1986年)を観る。老いたマルチェロ・マストロヤンニをとらえるカメラの残酷さ。もうちょっと撮りようがないものか…と思うくらい、そこに映し出されているマルチェロ・マストロヤンニは、あの著名な俳…

うつしかえと結び目のはなし

銀座で、コイズミアヤ展「うつしかえと結び目のはなし」(ギャラリー椿GT2 2022/5/7~21)を観る。「あやとり」と「結び目」から着想された二種のシリーズで構成された展示。 「あやとり」は、あやとりをするときの、あやとりの紐が手順を踏むごとに交差を重ね…

夏物語

録画してあった、エリック・ロメール「夏物語」(1996年)を観た。ギターを背負ったおそらくはミュージシャンを志しているガスパールという名の若い男が一人、夏の避暑地にやってくる。恋人レナと待ち合わせて後日島へ向かう予定だが、しかしそのレナとの約束…

買い物

店頭でオリーブオイルのグラスに注いだものの香りを確かめさせてもらったら、これがたいへん深く濃く爽やかだった。こちらは少し違った製法ですと言って、店員さんが差し出してくれた別のオイルは最初のよりは少し柑橘系のやや優しい印象だった。この二本を…

駅馬車

ジョン・フォード「駅馬車」(1939年)、今から八十年以上前の映画か。しかしクライマックスの騎馬戦闘シーン、これ以上の場面を、おそらく映画はこれまでもこれ以降も、永久に撮ることはできないのじゃないだろうか。というか、今のご時世もしかすると、数年…

カラス

さっき妻から聞いた話。お昼休みに外でお弁当を食べていたら、近くのベンチにいた女性二人が突然悲鳴を上げた。驚いて声の方を見ると、二人の逃げ去ったベンチに、巨大なカラスが大胆不敵な態度で近づいてきて、残された二人のお弁当の前まで来ると、ラップ…

子供の恋愛

先日CSチャンネルでたまたまウェス・アンダーソン「ムーンライズ・キングダム」(2012年)が放送されていて、あまりちゃんと観てはいなかったので映画の感想とかではないが、しかしこの映画の何が魅力的かといえば、ジャレッド・ギルマンという男の子とカーラ…

グッドフェローズ

AmazonPrimeでマーティン・スコセッシ「グッドフェローズ」(1990年)を観る。ジョー・ペシがまくしたてるジョークを、たぶん全然面白くないのに大受けのふりをしてるレイ・リオッタの爆笑顔が最高だった。口だけで笑ってる、こういう笑い顔のやついるよなー(…

グランド・ブダペスト・ホテル

DVDでウェス・アンダーソン「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)を観る。これを観ると、やっぱりウェス・アンダーソンは天才だと言いたくなる。ただしそれは、わけのわからない、前代未聞の、説明不可能ながら、とにかくものすごいものを作るから、とい…

久々の店に行ったら、雨のせいか金曜夜だというのに暇そうで、客は常連ばかりで、スタッフの子たちも、もてあました時間によりかかった馴れ馴れしさ微増のリラックスモードで、店主はやたら声をはりあげたナチュラルハイ状態で、ほとんどお店の緊張感なしく…

目を閉じる

屋外で絵を描くこと、それは、その場であらわれるものとか、消えゆくものとか、動きとか、そういうのをできるだけライブ感覚でリアルタイムで感知して、即時的に画面に定着させようとする試みだろう。だから屋外で描かれる絵は、事前の設計図をもつことがで…

ギターソロ

最近の若い人は音楽を聴いていて曲がギターソロになるとその部分をスキップするとか、そんな話題を見かけた。最近の若い人は…系の話は、すべてほぼ百パーセント眉唾だと思うが、ギターソロが嫌いな人なら今も昔も一定数いるだろうと思う。あの自己顕示欲の解…

懐かしい昔

だいたい三十年前だとか、五十年前だとか、過去の時間を想像するときのボリューム感は、自分が生きてきた時間の長さを基準にしたくなる。だから今の自分が、今から七十年前を想像するのは難しい。と書いたけど、五十年前なら自分が生まれた時代だから想像で…

人並み

老人に近づくというのは、じつは子供が小学校に上がるのと変わらなくて、どちらもある決まったしきたりに従うしかない、そのことへの所感を胸におぼえるということだ。だから「年を取るのは嫌だね」などと口にする自分を含めた多くの人は、なんだかんだ言っ…

アメリカン・ニュー

古い映画雑誌(リュミエール1987年-春)を読んでいて、はじめて知って驚いたのだけど、1962年公開のトリュフォー「突然炎のごとく」を観て興奮したデヴィッド・ニューマンとロバート・ベントンは、ボニーとクライドの実話を下敷きにした脚本をもってトリュフォ…

写真に見る足立の交通誌

足立区で暮らしはじめたのが2000年初頭ということは、すでに22年にもなる。それまで実家の埼玉に住んでいたが、大雑把に考えれば自分のこれまで生きてきた時間は、埼玉時代と足立区時代で二分されると思って良いだろう。 足立区で暮らし始めたそもそもの理由…

観る

映画つくりの経験もなく、ただひたすら他人の作品を見るだけで満足している映画ファンというのは、なんとしあわせなことだろう」とジャン・ルノワールは彼の自伝のなかで書いている--- 禁断の木の実を食べないかぎり、安心だ。映画を作ることによってわたし…

天国にちがいない

AmazonPrimeで、エリア・スレイマン「天国にちがいない」(2019年)を観る。主演でもあるエリア・スレイマンの顔、この顔が良いのだと思う。この顔がこうじゃなければ、この映画はこういう感じにはならない。この映画に起こる様々な出来事を、主人公が見るのと…

藤島武二

ブリヂストン美術館からアーティゾン美術館に名前が変わったのが、いつの事だったかおぼえてないけど、リニューアル以来はじめて八重洲のかの地を訪れた。以前とはぜんぜん違う別の施設みたいになっていたが、展示されてる作品はたしかに石橋財団だ。 藤島武…

冬物語

録画してあった、エリック・ロメール「冬物語」(1992年)を観た。 どこかホン・サンスを思い出させる、というかそれは逆で、ホン・サンスをはじめて観たとたときに、どこがとは言えないけどなんとなくロメールっぽい、と思ったのかもしれない。 いくつかの出…

談義

きのうだけど、夕方から【配信版】音楽談義vol.2(保坂和志、湯浅学、松村正人)を聴いていた。人が音楽の話(音楽家や聴き手や時代状況を含む)を、わりとゆるく話しているのを聞いているのは楽しい。たぶん三、四時間聴いてたけど、後半はずっと声をあげて笑い…