2026-02-01から1ヶ月間の記事一覧
乃木坂の新美術館で「テート美術館 - YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」を観る。最初の部屋で、ベーコンの作品と共に「フランシス・ベーコンからブリット・ポップへ」と掲げられている。一瞬、うわ、まじか、勘弁してくれ、そんな話は初耳だと思う。…
図書館で借りた、鈴木良三「中村彝の周辺」は面白かった。書くにあたっての企みがあまり感じられない、ただ思いつくままに人物を列挙しているようで、それがかえって、特定の視点から見たあの頃のあの感じを、過不足なくあらわしているように読める。 自身画…
星野源と松重豊が音楽を紹介する番組から聴こえてきた、スガダイローのピアノソロによる"Stompin' at the Savoy"が良かった。 "Stompin' at the Savoy"といえばチャーリー・クリスチャン。往年のスイング・ジャズという感じだけど、チャーリー・クリスチャン…
「10ミニッツ・オールダー」は2002年の作品であるが、<イデアの森>のマイケル・ラドフォード「星に魅せられて」は、光速の宇宙旅行から帰還した主人公が、すっかり年老いた自分の子供に再会する話である。帰還後の主人公を、独特な仕草と表情の、女性型人造…
「10ミニッツ・オールダー」<イデアの森>よりベルナルド・ベルトルッチ「水の寓話」。エリセも良かったが、こちらも良かった。 荒涼としたその地は、イタリアのどこかであるらしい。連行された移民の集団が列になって歩いている。ひとりの老人が列から外れて…
中井の林芙美子記念館を訪れた。何ときれいな家だろうと思った。1941年に建てられたとのこと。よく戦災に合わずに済んだものだ。 日本家屋といっても豪邸と長屋ではまるで違うだろうけど、それでも日本家屋である以上、豪邸と長屋にも共通する要素はある。尺…
ツタヤディスカスで借りたDVD「10ミニッツ・オールダー」<イデアの森>、<人生のメビウス>と続けて観る。 共通のテーマをもとに10分という尺で作品を作るというとき、いわゆる大喜利的な枠組みがどうしても浮かび上がってしまうのだが、そのなかでもビクトル…
足立区に住んで、もう二十五年になる。あらためてこう書くと、そうなのか!それはすごいことだなと思う。二十五年もの長きにわたり住み続けた拠点はここ以外にない。 ちなみにその間ずっと、何の変哲もない、妻と二人の暮らしである。おおよそ変化というもの…
熊谷守一が樺太調査隊に参加したのは1905年で25歳のとき、日露戦争の結果拡大した領土の調査が目的だった。 船旅で海が荒れると誰もが船酔いに苦しんだ。しかしいよいよ状況が悪化し転覆遭難の可能性が出てくると、急に誰もが立ち直り、平然と正気を保って鼻…
新宿のSOMPOで先週観た中村彝をきっかけに、ウェブで読んだ新宿中村屋の歴史が面白かった。 中村屋の歴史https://www.nakamuraya.co.jp/pavilion/history/ 会社の広報コンテンツではあるけど、それでもさすがに面白い。ちなみに中村屋という屋号は、創業者の…
「春と修羅」の永訣の朝、松の針、無声慟哭。宮沢賢治は妹のとし子をなくす。宮沢賢治の生涯は三十七年だったけど、その長いとは言えない年月の多くは、とし子を喪った悲しみに覆われていただろう。その理解出来なさ、理不尽さ、不条理さ、納得のいかなさに…
注文したカサゴの煮付けがきた。ぼくは魚は、隅から隅まで徹底的に食べつくす。この店の従業員は、高齢者と称される女性の方々ばかりなのだが、会計のときに、まああなた、きれいに骨だけ残して、ずいぶん上手に食べたわねえと褒められて、婆さんからこんな…
飲酒は詰まるところ、自己憐憫の手段でもあり、味わいとかよりも、ただ自己慰撫のぬるま湯に浸かっていたいということ。上林暁の、ただひたすら酒を飲んでる短編小説群を読むことで、そのときのだらしない甘えの気分を思い出し、軽い反駁と羨望を感じながら…
ビクトル・エリセ「エル・スール」の父親は寡黙な人で、その点「ビッグ・フィッシュ」の父親とずいぶん違う。ただ「エル・スール」の娘はまだ幼く「ビッグ・フィッシュ」の息子はすでに成人して結婚して子供まで生まれようとしているのだから、親子関係だけ…
SOMPO美術館「モダンアートの街・新宿」の中村彝「カルピスの包み紙のある静物」を観て、中村彝とはこういう画家なのかとはじめて知った気がした。 これまで中村彝といえば、ぼくにとっては「髑髏を持てる自画像」一点の画家、という印象だったからで、「カ…
上林暁の、ただひたすら酒を飲んでる短編小説「春寂寥」は昭和24年頃の作品。主人公が店先をのぞくと、いつもの汚い土間ではなくて、突如として二間、新しく新築されている。赤子のおしめまで干してある。店の女が子を産んだのを知る。他に客は誰もいないし…
小島信夫は1915年生まれだから、今年で生誕111年。そんな昔の作家には思えないが、じっさいはそうなのだ。ちなみにロラン・バルトと同い年である。6歳上に、太宰治、大岡昇平、淀川長治がいる。この3人も同い年である。 去年が生誕100年だったのは三島由紀夫…
「冬のなんかさ、春のなんかね」三回目は面白くなくて途中でリタイアした。が、四回目は最後まで見た。やはり面白いわけではなくて、取るに足りないことがひたすら冗長に続いてるだけのようではあるけど、しかしほんの一瞬だけ、少なくともぼくにはそこ重要…
ザ・シネマでティム・バートン「ビッグ・フィッシュ」(2003年)を観る。 面白話で周囲を笑わせるのが得意な父親がいる。自分の過去をネタに虚実ないまぜにした話で人を楽しませる。誰もがそれを面白がって聞くが、主人公である父の息子は、そんな父に対して腑…
雨が降ってる中でも、雨ガッパを着て釣りしてる人たち。うちの近所の、辺鄙な池の周りにも、ああいう人たちはいる。早朝から夕方まで、変わらずじっと、地蔵状態で水面を見つめている。 子供の頃、母と近所のおばさんが並んで、ぼくもその後ろについて歩いて…
ほんとうの意味で、等しく平等で何にも分け隔てのないものと言えば、雪だろう。なにしろ上方向に向いた箇所であれば、どんなところにも一様に白く降り積もる。大きな面積から、微小な面にまで、まさに無条件で、きっちりと白くマーキングしていく。 白い箇所…
Amazon Primeで緒方明「いつか読書する日」(2005年)を観る。主人公の田中裕子が生活している、坂の多い町の景色が素晴らしい。坂と階段の組み合わさったような町である。その勾配に住宅が貼りついたように建っていて、田中裕子はひたすら階段を昇ったり降り…
たとえば「もうダメだ、これ以上は無理だよ、あきらめよう」との言葉に対して「だめだ!俺たちは最後まであきらめないぞ!」と言い返す、そういう会話パターンなら、よくあるやつだ。 しかしその逆はおかしい。つまり「最後まであきらめずにがんばろう」との…
家を出てほんの十数メートル先にバス停があり、毎朝きまった時間に家を出るのだが、時刻表ではその五分ほど前にバスは出てしまっているはずだが、たまたま遅れてやって来たバスに、ちょうどいいタイミングで乗れる日もある。 駅までは歩いて十五分くらい、そ…
鉄道文学傑作選に収録の、上林暁「鄙の長路」という短編が良かった。 私小説がとくに好きというわけではないつもりだが、以前、近松秋江にはまった(連作三篇を読んだだけだが)ことがある。上林暁は、秋江とは違ったテイストの、どこか脱力な、固有な味わい深…
ニ三人ずつ向かい合わせのボックス席みたいなベンチシート。80年代から続いてるヤンキー漫画で、登場人物があぐらか立膝で話に夢中な場面、 あるいは、エドワード・ホッパーのほぼ無人な店内。あるいはウォン・カーウァイ(花様年華)で、向かい合うスーツとチ…
ワインは、ある一定価格以上かそれ以下かで、如実に味わいが違うのはたしかで、ことにフランス産ならば、ほぼ例外なくそうと言えるが、ある意味でシャンプーも、それと似たところはあると美容師のTさんは言う。 ある成分の入ってるシャンプーであれば、小さ…
べつにおでんをことさら好きではなかったはずだが、どうしたことか今日のおでんは、じつに美味しかった。ぼくは練り物はわりとどうでもよくて、大根、こんにゃく、シラタキ、さらにニンジンとかジャガイモとか、そういったスタンダードな野菜を中心に好む。 …