作品の展示をやるようだ


随分時間が掛かってしまったが、やっと作品を展示することにした。まだ先の話ですが個展をやるのです。場所は銀座のギャラリー現で、6月18日から5days。こうして美術の現場のとば口に立ちまして、やっと僕もまごうことなき「美術の人」第一歩な「新しい人」ですわ。セカンドカミン!レザリクショ!ほんとうのキャリアのスタートですわ!などと一時的に密かに盛り上がってみた。


会社員で、結婚もしています。制作は一時期やめてたんですが、やっぱまた描き始めたんです。個展は10年ぶりです。とか言ったら、まあ…10年もしてから又やろうなんてよく思ったわねー。と半ば呆れ顔で言われた。確かにそうだ。すいません…


作品写真のファイルを見て頂いたのだが、ページを開くや否や「あらー…まあすごい」とか困惑とも苦笑ともつかぬ感じで仰られて、なんだかすごいコダワリなのね。等のお言葉をいただく。…これがもう、何年ぶりかで直接僕の耳に届いた、自作についての実に久しぶりの「外部」からの言葉で、そのこと自体になんだかくらっと眩暈を覚える。


貸しギャラリーに行って、作品見せて、会期とか諸々の話をして、と、それだけの事なのに「美術の現場にコミットした」感の、超久々な新鮮さにアてられた感じで立ち去った。…でその後、やっぱ俺の作品は良い悪い以前に、相当「痛い」シロモノなんではないか?僕は実のところ、かなり基礎的なすごい浅瀬なところで大いなる勘違いをしてるんではないのか?というような悪い予感がモクモクと立ち上っても来たのだが、それはあるいは事実なのかもしれないのだが…しかし毒にも薬にもならないよりは「痛い」方がまだいいだろ?とも思って覚悟を決める。


…まあでも、つまらない話だけど「君もついに【美術】にログイン!」という感じがあって…ってお前はこないだ美大に入学したばっかりか?って言われそうだが、実際ほぼそれに近い気分ではある。こういうのって幻想だよなあと思う。実際は、どこにもログインなんてしてない。別に何にも接続してないのだ。というかこんな事、35歳にもなって書く内容じゃない…。まあでもこういうのが久々なので、懐かしさ半分で、なんか面白い気分なのだ。昔、若かりし頃、何よりも恐れ、ゼッタイに拒否したかったのが、そういう風に何かに接続してしまう自分の運命であった事(それが気に食わない→そうではない別の何かなら良かっただけだが)も昨日の事のように思い出す。


まあでも今、性懲りも無く、いい年こいて再び描き始めてしまった僕は、もはや自分や自分を取り巻く状況に関して、あのときのように恐れることは無いだろう。長い年月を経た僕にもし「成長」と呼べるような変化の跡が残っているのだとすれば、それは昔のように恐れることが無い(恐れる心を失ってしまった)という事だけだと思われる。


なんかおびただしい数の水着の老若男女が、縦横無尽に泳ぎまくってる果てしない大海原があって、ついに僕も海パン一丁になって、そこに入水するって感じで、この美術に纏わる夥しい行為の集積の一部に、僕も再び加わっていくのであって、多分このまま波間に揉まれて、僕という存在も見えなくなり、消えてなくなってしまうのかも知れないが、まあ僕は単純に、僕が良いと今まで感じたり、これからも感じ続けるであろう何かを、これまでのように無かったことにせず、確かめ確かめ、今までもこれからも、残された時間描き続けるというだけの事なので、その端緒となればさいわい。