キュビア


夜から少しずつ呑みはじめて、いくら呑んでもまったく酔わない酒をひたすら呑んだ。酔わないどころか、体温を一度たりとも上昇させないような、ほとんど水物のような酒だと思った。最近の日本酒にはこういうのが多いのか。こちらの体調に起因するのか、よくわからない。


妻に頼まれて録画しておいたフィギュアスケートの実況放送を見る。ジャンプしたり回転する少女たちがたくさん出てくるお話である。目視できないくらいのすさまじい速さでクルクルとまわるのにも驚くが、その後着氷してから後ろ向きですーっとすべりつつ通常体勢に戻っていくのを、事も無げにやっているのをみても、実にすごいと感心する。


その翌日、晴れ渡った空の下を歩いて駅へと向かい、電車を待つプラットフォームでふと思いつき、iPodTouchからYoutubeを起動してmaoで検索したら、昨日の映像が出てきたので、しばらくそれをみていた。小さな画面の中で、フィギュアスケートをする少女が昨日と同じようにすいすい横移動している映像なのだが、無線LANの電波状況が悪く、かくかくと小刻みに停止と再開を繰り返し、やがてその少女が踏み切ってジャンプして、中空に浮いて、そのまま停止したまま、コマ送りでゼンマイ仕掛けの玩具のごとく、火に炙られる串刺し肉のごとく、数段階にわけて一秒ずつカクカクと落下していった。