寒さ


星がきれいだと言うのでべランダに出て空を見上げてみたが、いつもの星空できれいというほどでもない。一等星が何個か光ってるだけの、凡庸な関東平野の夜空だ。また、ものすごい夜空を見に行きたいものだ。澄んだ夜空というのは、晴れていても曇っていても良いものだ。澄んだうつくしい夜空のきれいさというのは、星や月がきれい、とうよりも、心をうつのはそれらが配置された空間全体の深さなのだ。


自宅から見る夜空はつまらないが、しかし外から入ってくる冷気のきびしさにおどろいた。むしろ、寒さの方が強烈で素晴らしい体験だった。この寒さは、ホンモノだ。今シーズンダントツで一番の寒さではなかろうか。


最近は、自分の中で、厳しい寒さというものに対して、うわーさむ!という思いのほかに、うわー素晴らしい!という気持ちが少しだけ混じりこんでいる。寒ければ寒いほど、素晴らしいと思っているところがある。身体的には、勿論寒いので苦痛である。しかし、その苦痛な感じと素晴らしいと思う感じは相反しない。たぶん寒さにある種の徹底を感じるからかもしれない。その徹底さ加減を、信じるに足る何かと思えるということで、そう思えると、肉体的苦痛や感覚的な愉悦よりも強い力で「素晴らしい」と感じさせられる力が持続するようである。