TOTO


ひたすら悲しみに暮れる。泣きぬれる。トイレに行って、小便器に向かって立ち、ジッパーを下げて前を開け、股間をもつ両手のそれぞれの腕に生えた産毛が、冷たい陶器の左右の淵に、着くか着かないかくらいの距離にまで近づいて、ふと力を緩めて、尿を放出する。尿が流れ去っていくのを見る。排尿を続けながら、視線を下から正面に戻し、目の前の壁を見ながら、そのまま待つ。排尿が進むにつれ、少しずつ下腹部の圧迫感が薄らいでラクになっていくにしたがい、また悲しみがよみがえってきて、目と鼻の奥から熱い涙がこみ上げてきたので、再び顔をゆがめてしばらく嗚咽する。再び視界が涙で曇り何も見えなくなる。排尿もなかなか終わらないし、涙も止まらないのでそのままにしてるしかない。やがて終って、ジッパーを上げて小便器から離れると、自動的に水が流れ、頬に残る涙の筋が半乾きになっていて皮膚を引っ張る感じで、顔が酷いだろうと思って急いで手洗で顔を洗い、ハンカチをポケットから出す。ハンカチはかなり湿っていて気持ち悪い。顔のところどころに当てるようにして水分を取り、あとは手のひらで気合を入れるように両頬を叩く。鏡に写った自分の顔を見る。わざとバカな顔をしてみる。ふーっとため息をついてみる。