渚にて


 ぼわーっとした気候。夏のムードだ。ある意味仕事してる方が楽でよくて、遊んでるのは頭使うからしんどい、ということで、仕事に逃げる。面倒くささがかえって助かるような。それでも、じきにやることが終わると、仕方がないからその場に座ってるしかない。せっかくの休日で、気候も快適なのに。明日からはもっと違う風に行くように…。

 昨日ネビル・シュートの「渚にて」を読み終わった。なんだか先週からの一週間、夢中になって読んでしまった。古い小説だなあ、という印象で、これは悪い意味ではなくて、古い家具とか、古い車とか、そういう言い方と一緒。つまりたいへん趣き深い。なにかを諦めたような、透明な水のような流れにのって、さらさらと読みながら、しかしところどころ、冷静な気持ちのままでは読み進められない箇所も度々あって、とにかく作品にしっかりと掴まれたまま、通勤の朝と帰りと、帰ってから寝るまでの間も、ほとんどの時間はこれを読んでいた。とくにホームズとその家族が、自分としてはまったくみずからの身に起こった出来事であるかのように、色々なことを深く感じさせられた。小説としての最後も、あくまでも淡々と、変わらぬ速度で、律儀に終わっていき、読了後も、絶望でもなく希望や感動でもなく、喜びとも悲しみとも違う、複雑な気分の余韻にしばらく浸ったままだった。

 さて今日からは何を読むかを考え中。