花火


今日の横浜地方は、花火大会の夜で、職場のビル周りも人でいっぱいだった。警察官や案内係や貼り紙や誘導ロープもやたらと張り巡らされていて、浮かれたお祭りムードという感じ。しかし暑いのは暑い。とはいえ人の数が凄い。みなとみらい駅周辺を目指す人、桜木町周辺を目指す人と両方いて、行く方角も来る方角も同じくらいの人ごみである。広い道路は一般車両が通行止めになっているらしく、たくさんの人がじかに座り込んで同じ方角を見ている。夜の闇は熱と湿度で濁ったような濃紺色で、ビルとビルの間にはさまれた一角から、花火の光りが上っていき、さーっと輪になって広がる。細かい花弁のようになって消える。少しずれて、どん、と爆発音がする。連続した花火の炸裂を見ていると、まるでビルとビルの間に、もう一つの、ひときわ明るいビルが、そこに忽然とあらわれたかのようでもある。僕もその場にしばらく立ち止まって眺めていて、全身からどろりとした何か重いものが溢れ出てくるような感覚をおぼえる。こうやって立ったまま、じっとしていると、ああ、全身がくたびれているのだなあ、というのが、はじめてわかる。月もよく出ている。とても明るく輝いていて、周囲に浮かぶ雲を内側からみずからの光りで明るく照らし出していた。