ビールがおいしいと思うことがほんとうに少なくなった。というか、飲みたいと思ってないときに飲んでも、ほとんどおいしくないことになってきた。ビールは飲むのがけっこう難しい飲み物じゃないかとさえ言えるかもしれない。でも麦の香りと炭酸を組み合わせるなんて、素晴らしいアイデアだ。ワインもビールもメソポタミア文明の時代からあるのだ。メソポタミア文明の時代で、すでに、味わいというものがあった。それを口に含んで、味覚が脳内に広がり、ある思いに駆られるのが、古代から在った。ということはつまり古代も現代もそこは共通のものを使っている。組み合わせの成果を良しとする判断基準を共有する。麦の苦味や、炭酸のさわやかさというのは、もう確定した歴史的価値なので、ビールがおいしいと思わないのだとすれば、その歴史の太古から発するゆるい波線の範囲から、今たまたま、少し外れているからだろうか。