ずっと同じ時間、一箇所に居なければいけない二人の男がいて、それが一年半くらい続いているとして、さすがに最近、話すことがなくなってくると、無理やりな会話になってくるものだ。

「なんで人間って、腕にデカイ羽根を付けても、空飛べないんですかね?」
「最初はライト兄弟がはじめて飛行に成功して、その前にリリエンタールが腕に羽根付けて飛ぼうとしたかもしれないけど、失敗したんじゃなかったっけ?」
「そうなんですか。ていうか、でもなんで、それで飛べないんですかね?鳥は飛べるのに、人間が飛べないのはなんでですかね?」
「やっぱ、鳥の重さと腕力の比率が、人間より全然大きいからかね?」
「あー、だったら、人間の腕に、何かパワー増幅機を付けて羽根をばたばたすれば、飛べますかね?」
「うーん、たぶん飛べんじゃない?」
「まじですか。そうか、じゃあ人間は、あえて飛んでないってだけなんですね。」
「いや、飛んでんじゃん。人間もうけっこう飛んでない?」
「いや、機械の力を借りるのはなしですよ、あくまでも人間の自力で飛ぶことができるかっていることなので。」
「じゃあ、機械で羽根を羽ばたかせて飛ぶのも駄目じゃん。」
「いやいやいや、それはいいでしょ。自力で飛ぶための工夫なんだから。」
「あー、そうなのか。それはいいのか。でもまあ、たしかにもっとシンプルに飛べても良かったのに、人間が空を飛ぶのはいまだに、妙に大げさな感じがするしね。」
「いや、だから俺は普通に、休みの日に子供と二人で川原沿いとか公園まで散歩に行って、そこで軽く飛んでみるみたいな感じのことを言ってるんですけどね。そういうのはもう21世紀なんだから普通にできないの?っていうことなんですけどね。」
「おおー、たしかに。こども今いくつだっけ?」
「上の子が4歳ですよ。もう、超うるさいんですよ。」
「最近子供と、二百メートルくらい飛ぶフリスビーで遊んでるの?」
「あれ、なかなかやれる場所ないからやりたいけどできないんですよ。でも今度四百メートル飛ぶやつも買おうと思ってるんですけどね。」
「四百メートルだと、ほとんど川から川の向こう岸に目掛けて投げる感じかね?」
「でもそれ勇気いりますね。」
「いるいる。」