一日、家でごろごろしてるだけ。風邪が治らないからしょうがない。朝起きた時点で、昨日とくらべて悪化してないので、ということはこのまま快方へ向かうということだと思って、心軽く過ごしていたのに、午後になっても体調が変わらない。こういうのははじめてだ。良くなるか悪くなるかのどちらかだと思っていたのに、中途半端にだるいような、熱っぽいような、身体の節々が軋むような感じのまま、時間が過ぎていくだけである。これって発症とも言えないだろうけど、健康体とも言えない。でも、普段の通り行動するのは、しんどい。つまり進行が遅い。まったくなさけないありさまであるなあ。


ヘンリー・ミラー「マルーシの巨像」。ギリシャの、パトラスの港に船が着くあたり。今日一日で心がわくわくと動いたのは、この箇所を読んだときだけ。アンゲロプロスの映画に出てくるような、ああいう船着場。適当な店があって、オープンテラスの席に、旅客がぐったりと坐っていて、遠景には、海と白い空が境界線をぼんやりと滲ませているような…。(おそらくアンゲロプロスの視点には、ちょうどヘンリー・ミラーが見た景色や年代前後への郷愁が含まれるのだと思うが。)

山腹に突き刺さった矢のような形をした大きな岬へと、船はまっすぐ突き進む。波止場には、電灯がいくつも紐に吊り下げられていて、日本的な雰囲気を醸し出している。ギリシャの港はどこでも、即席にしつらえられたような照明が吊り下げられているので、それが何となく、祭りが近いような印象を与えるのである。港に入ると、小さな舟がいくつか出迎えに来る。