太陽の光が空気中にみっしりと充満したまま、風がまったく無いので空気がかすかに粘り気をもったみたいになっていて、歩こうとする身体に抵抗を感じる。木々の緑色の深みがピークに近い。緑色という色は絵の具で扱うのがなかなか難しいという記憶がある。というか、緑色と言われたら雰囲気で「あの色」を思い浮かべることはできるし、絵の具のチューブで「緑」を選ぶこともできるけど、実際には、こんな色は実在しないのじゃなかろうか、と思ったこともある。あの「緑」の絵の具で何かを描いて、それがほんとうに「緑色」になったためしがあるだろうかと思う。緑色というのは難しい色である。木々の新緑というのも、緑色のもっとも激しく鮮やかな様子だとも言えるだろうが、そうかと思って見続けていても、結局ほとんど何を見ているのかわからなくなるような、とらえどころの無さだけしか見えなくなってしまう。夏といえば緑、ですかね。それはそれでいいかも。夏全体と同じくらいには芒洋ととらえどころの無い色だし。でも、緑といえばハートランドビールの瓶の色も緑。これは安心の色。どこにも逃げずにここで冷たいままで静かに立っている。