少し、口ごもった。幾つかのタイミングを、外した。ああ、昔みたいに、また元通りな感じがした。それでもやがて、独りよがりなぬくもりが戻ってくると、またふたたび何もかもが上手くいくために出来ているはずの空間が立ち上がって来て、ほどなく何の心配もなくなってしまう。雨も上がったね、もう夏かな、うん、もう夏だよ、ざわざわとした声、雑踏に車の通り過ぎる音、草の育つ気配、雲間から月、黄色に染めたような、雲まで浸潤するかのような、その滲み。湿度、雨上がりの、アスファルトの路面の。夏日間近の。