Gratitude


ビートルズの、あの部分はすごいと思っている。ビートルズのすごさは一枚岩ではなく、いろいろな側面においてすごいのだが、それにしても、ビートルズの、ああいう部分はすごいな、あれはほとんど奇跡というか理屈で考えても解明できないすごさだな、と思う部分がある。


ポップミュージックには色々あって、自分のなかで、それがかならずしもその音楽の好悪とか評価的なものとリンクしているわけではないにせよ前述のような、なんだか知らないけど理屈で考えても解明できない、わけのわからないすごさを持つバンドだな、と思っているような音楽がいくつかある。


ビートルズの他だと、クイーンもすごい、と思っている。ほとんど、唖然とさせられるような部分がある。クイーンは今や、これ以上ないくらい人口に膾炙し尽した感があるが、それでもまだ、あの独特の凄味については充分に語りつくされてないような気さえする。


ジャンル横断的な雑食系ポップサウンドのことを言ってるのか?と問われたら、そうかもしれない、と応えても良いが、しかしその手のバンドのすべてをすごいと思うわけでもない。


エスもそうかもしれない。これも異常。しかしイエスはもはや、聴き過ぎてしまった。レコードが擦り切れるくらい聴くという言い方があるが、実際にレコードやCDが壊れるほど聴くということはなかなか無いだろうが、その前に自分のそのバンドの音について保存している記憶の方が、ツルツルのなめし皮みたいになって黒光りしてきて、なんとも扱いづらい状態になってしまうことはある。今イエスを聴いても、もう目の前にある何をどう聴いているのか、自分でもわからないと感じてしまうようになっていて若干困惑している。


Earth, Wind & Fireもだ。しかし、今まで聴いてこなかった音楽は星の数ほどあるが、Earth, Wind & Fireもじつはその一つだった。ベスト盤一枚くらいのレベルでしか聴いてないし、ほぼ興味範疇外に近かった。しかし、Earth, Wind & Fireも、今日で奇跡レベルの仲間入りだ。


先日、図書館で借りた河地依子「SOUL definitive 1956-2016」を、一日中ひたすら夢中になって読んでいた。R&B、ソウルのディスクガイドだが、読んでるだけでとても楽しくて、そしてapple musicでディグりまくって片っ端から聴きまくった…と言いたいところだが実際に聴きまくるには相当な時間が必要なので、聴きたいという気持ちに比して、実際に聴けたのはまだ僅か。でも適当に摘みながらとりあえず十枚くらいは聴いた。十枚だってかなりすごい数だが、一枚あたり一曲か二曲ずつ聴いたというだけで、全然大したことない。一枚を最初から最後まで聴く方が、ぜんぜん時間が掛かるし、その方がいいのだが。で、その一枚にEarth, Wind & Fire「Gratitude」という1975年のライブ盤があって、これが、なるほどやっぱり、Earth, Wind & Fireって、すごくいいグループだな、ほとんど奇跡的だなとしか言いようがない。ほんとうにすごい。


本稿で挙げたバンドすべてに共通するが、ある部分においてなんとなく、作ったのが人間じゃないような感じがするというか、別の質感、別のエネルギーで出来ている感じがするのだ。