「その男狂棒に突き」山下敦弘


その男狂棒に突き■ [DVD]


「その男狂棒に突き 」の主演男優である山本剛史は、もう他の追従を許さないどころか、追従しようとする他に向かって後方射撃も憚らない位の留まる所を知らぬ勢いを感じさせる、この世界の高みにあえなくも達しまくりの感がいささかではあるが感じられる、この現代日本において真に稀有な俳優だ。「不詳の人」もすごかったが、僕はこっちに軍配を上げる。でもどちらも必見で、今回レンタルで鑑賞させて頂いたと言う事でもあります関係上、共に後日DVD購入を検討したい。


山本剛史演ずるところの「汁男優」なる職業を、今回僕は初めて知ることができた訳だが(知りたくばググれ)、この世間体的観点からは反論の余地がいささかもあり得ぬ凄絶な職業に就きながらも同時に「刑事」であるという複雑極まりない現代ならではの設定を華麗にこなす俳優の力量に、全身の毛穴から身の毛がよだつ思いを禁じえないのだ。


劇中、ファミレスにおける撮影前の完膚なきまでに雰囲気悪すぎな打ち合わせシーンを皮切りに、撮影日を通してトラブルが連続する凄惨なシークエンスを、映画であることを忘れて感情の昂ぶりを抑えられなくなるような事がないよう細心の注意を払いつつ我々は口をあけ放したまま見つめるほかない。


この劇中、山本剛史に匹敵する神がかった演技を披露するのは、主にピンク映画の世界で活躍してるらしい女優、里美瑶子である。彼女は劇中で、山本剛史演ずるところの「汁男優」と、デートして、観覧車とか乗って、そのままホテルで「絡み」まで。という工程を撮影されるべく、女優として頑張るのである。


世の、ヘテロセクシャルな嗜好を持つ男性の、いったい誰が、この劇中のAV女優役に救いの手を差し伸べたくないなどとたいと(あれどっちが正解?要するに差し伸べたいと思うでしょ?と言いたい。訂正者注)、思わずにいられるだろう!


可憐。としか言いようの無い献身的な態度で、「撮影」を遂行しようと試みる里美瑶子の演技は、ほとんど全身の毛穴から、歓喜の涙、がよだつ思いを禁じえないのである。


ひとことで、いえば「萌え」である。すごいブスな、クローズアップの見上げのショットとか、鼻の穴が見えそうな感じとかに、萌えまくる。あと後半、すでに堪忍袋の緒が切れ掛けで、相手に対してもう嫌。こいつうんざり…っていう感じの斜め下を見てる顔とか、すごい堪らない魅力である。ああいう顔されると、超・興奮するよね(笑)すごい好きになっちゃった。。AVとかあるんだろうか??あってもただやってるだけか。それだと面白くないなー。超!いらいらしてる表情とか、「耐え難く不快な気持ち」を抱えてるときの表情をもっと観たい(笑)。


あと、メイキングで山下監督が、撮影中に笑い過ぎてムチャクチャNG出しているという逸話に爆笑した。笑いを抑えるためにカメラ見ながらタオルを噛んでる。と。(笑)・・・で、本編にその咽てる音が入っていること自体、どうなってるんだと(笑)・・・コメンタリーで、プロなんだからいいかげんにしてほしいとか山本剛史が半分マジ気味に言っていて超笑えた。やー映画撮るって楽しいんだろうなー。