Drive My Car


昔から思っていたことなのだが、絵を描くというのは実に体をよく使う。まあ文章を書くのだって体を使うのだが、使い方が全然違う。というか、くたびれ方が全く別種である。絵の場合、どうしたって画面の前に相当近づいたり、少し離れたり、持ち上げたりかき回したり、全体に塗布したり全体に削り落としたり、立ったり座ったりしゃがんだりと、肉体労働的である。たとえば小説を書く人も、書いてる途中で立ったり座ったりするのだろうが、小説を書く人の身体的アクションが、目の前の文字で構成されたイメージを構築し続けるための、体とか気分とかの調整であるのに較べて、絵を描く人のそれは、絵を描く行為そのものであり、そういう事をまったく行わず絵を描く事はできないので、まあ結構疲れる。という話。…というか、運動不足解消になるほどではないけど、軽い運動にはなる。


あと、ぐっと集中するというのが、僕は昔から出来ない人で…というか、ぐっと集中しているという感覚がよく判らないというか…要するに、ひとつの事をやっていて、他の事がまるで意識に上ってこない状態の事をいうのか?とも思うが、でもそれって(そういう状態にはよく陥る。特に仕事でそうなる。)それってあんまりどうなの?と思う。むしろ制作してると、かなり色々気が散っているのだけれど、手の動きがやたら冴えている瞬間というのがあって、まあ描き始めて数時間たつと、大体そういう感じになるのだが、ああいうときはかなり気が散っていても、意識した通りの事ができてる。という感覚を強く感じられて楽しい。自分が描いていて一番良い感じに思えるのはそういうときだけである。まあ描くという事をしている自分のポテンシャルが、完全に暖まったエンジンとオイルで最高回転してる状態だから、逆に制御系の意識をクールダウン(というか気を散らせる)させないと、油断すると非常につまらない事をやったりするので難しい。…まあ、要するに僕は僕を基本的にあんまり信用せず、僕が完全に暖まったエンジンで最高回転できるコンディションの時こそ、僕自身をもっとも注意深く乗りこなさないといけないという事だろう。