地盤


子供の頃は、電車の車両と車両の間の連結部分の、鉄板が重ね合わさっている部分に立って、電車の走行により連結部分が伸縮したり屈折して、立ち位置が不安定に揺らぐのが面白くて、いつまでもそこで踏ん張っていたりしたものだ。


最近、というか春先になると毎年だけど、割と道路のあちこちを掘り返したりして、工事をやってるのがよく目に付くようになる。一体何が必要でそんなに何度も何度も地面を掘り返してるのかねえ?とも思うのだけど、まあ何らかの必要性があるからやってるんだろう。人の事いえない、僕もそうだし誰の仕事だって似たり寄ったりだろう。


下水工事なのかガス工事なのかわからないけど、アスファルトを剥がして地中に埋設された何かをメンテナンスしてたりすると、その現場の周囲にまで広がる未舗装面を剥き出しにしとく訳にもいかないから、とりあえず厚手の合板をべろべろと並べて寝かせて、一応支障なく歩行者とかが歩けるように暫定対処されてたりする事もある。そうすると僕やほかの皆さんは、その合板のベコベコとした上を歩くのである。このときふと、昔電車の連結部分に立っていたときを思い出したりもする。


かつて江藤淳は、東京オリンピックを翌年に控えた63年に、地下鉄工事のために道路がところどころ板貼りになっていた状態の昭和通りをふらふらと歩きながら、気が付いたら涙をこぼしていたのだそうです。