「風船」


風船 [DVD]


DVDレンタルにて。どうでも良いことだけど、ここでの森雅之が演ずる実業家のおじさんは、役名を村上春樹というのだ。もちろんこれは単なる偶然だろうし、この映画が作られたのはまだ1956年な訳で、森雅之も息子役の三橋達也にも、胡散臭い二本柳寛にもまったく村上春樹という感じはない。でもそれをぼんやりと感じつつ観ていると、ちょっと面白いところもある。


新珠三千代は辛気臭いけど相変わらず御美しい。北原三枝はなんだかよくわからないけどゴージャスで映画の華やぎとしては良い。んで、二本柳寛と北原三枝のやり取りとかが、異常なまでに歯の浮くようなキザなセリフのやりとりで、お互いの事をミッキーだのトムだの呼び合うし、ホテルのドアがノックされたら「カムイーン!」とか、嫌がってるときは「ノン!ノン!ノン!」とか云いまくっているのが、今となってはすごい。いやこの二人の、まさに風船的なふらふらぶりはちょっと今っぽい感じも微かに湛えており、とにかく明日の事なんかさっぱりわかんないという、次に水爆が落ちたら皆すべてお終いだ、みたいな無気力退廃感が絡みついていて、そうか56年って時代の、これもまたひとつの表情なんだろうなあと思った。学生デモ行進なんかも映り込むし森雅之なんかはそういう世情にもってかれた感が強く、最後はやっぱり一人で画家みたいな職人みたいな「自分探し系」になってしまうのが哀しいのだが、二本柳寛と北原三枝がこれからどうなっていくのかは気になる。「ピンボール」するには時代が早すぎるし…(似たようなゲーム機械をやってるシーンがちょっとあったけど。)