「Whip-smart」Liz Phair


Whip-Smart


最近聴いてるので気にいってるのは初期のリズ・フェアーだ。というか、初期しか知らない。99年に出たやつ以降は知らない。で今どうなってるのかと思ってyoutubeとかで見たら、その後も旺盛に活躍してるみたいだし、良い曲もあるみたいだ。でもリズ・フェアーといったらやはり90年代であろう。ロー・ファイとか云われていた頃のやつだ。リズ・フェアーの何がいいかというと、まず顔が美人であることだ。美人はいい。で、あと声がかったるそうで、素人臭いところも良い。で、それで何か不良娘風な、聞き分けの無い困った娘みたいなテイストを醸し出しながらも、なんだかんだ云っても、実はすごい広告屋さんとかプロデューサーのいう事をいちいち真面目に聞いて、ちゃんと仕事してる風な、そういう律儀にきっちりと計算ずくで作られてる、ハリボテ的かったるさな安いテイストが浅はかでとても良い。あと、歌詞にすごくセックスの事とか、後ろからされるとテレビが見れるからいいわとか、あなたのフェラクイーンになりたいわとか、そういう事を平然と歌うのだが、そういう、如何にもセンセーショナル狙いな、自己演出過剰な、如何にもミエミエな、装われた過激さというか、付け焼刃なビッチぶりも極めて痛く、浅はかな感じで、そこが素晴らしい。…で、そういうミエミエの未遂現行犯で捕まりそうなくらいヘタクソな詐欺を仕掛けてくるようなロック・アルバムが、リズ・フェアーのたとえばここに紹介してる96〜7年あたりに出た「Whip-smart」であるが、これが、前述の浅はかさを全部背負ってるがゆえに、とてつもなく良いアルバムとして結晶してしまってるのだから困る。ロック・ミュージックの最善な部分が、図らずも出てしまっていてやばい。こういうのは狙って出来るもんじゃなくて、確かに音だけ聴くとまさに、当時のいわゆるロー・ファイ・サウンド。という感じなのだが、録音・ミキシングされた音の質感の特異な感触というのは、このアルバムの魅力の単なる一要素に過ぎず、その特徴だけが、このアルバムの魅力を説明できる言葉であるとも思えない。たぶんこれはほんとうに、リズ・フェアーという女性の身体と脳をもってしか生まれてこなかった作品なのであろう。


で、興が乗ってきたので、気分が良い内に勢いでデビューアルバムの「Exile In Guyville」を聴き倒してやろうと思ったのに、部屋中をひっくり返して探してもCDが出てこない…。絶対どっかにある筈なのに、聴きたいとき聴けないんじゃあ、まるで意味ないです。…っていうか、やっぱりなんだかんだ云っても、リズ・フェアーを聴きたくなる事なんて10年にいっぺんかもしれないから、10年に一度召還されるブツ、という事で、そんなレベルのブツを大量に収蔵しとくっていうのもまあ効率悪い話だよなあとも思うけど…。でもそんな事はどうでも良くて、とりあえず聴きたいのに、聴けないのだ。今、そういうインシデントの去来中なのだ。…だから仕方が無いので、また後日にあらためてもう一枚買うことにしました。。