Techno 2 Techno


テクノを聴いていてつくづく思うのは、ああこの音楽は本当に、まったくもって音楽というものがそれ自体として音楽を駆動させているものなのだなあ、という感慨をひしひしと感じてしまうのである。それを突き動かしているのが、それ自体でしかないのである。自分の尻尾を飲み込もうとしている蛇のようなものだ。いや、尻尾を切って逃げたトカゲの、その尻尾がさらにもう半分になろうとするかのようだ。それが半分になる事の意味が、完全に宙吊りになっているのだが、もう一度そうなったら最後、止まることができないのだ。こうして何度でも何度でも、それは駆動し続ける。まあ現実のテクノは多かれ少なかれ、もう少し繊細で複雑なので、駆動し続けることに何度でも疑いをもち、それに疲れ、それを忘れたふりをしてさらなる駆動を試み、しかしやはり隠しようもなく萎えて、うなだれて、ところがそうこうしているうちにまたふいに気を取り直し、そのままここで最初から狙っていたといわんばかりにふたたび走り出す。正直、こういう音楽が、この先も何十年も続くのか?あるいは逆に、こういう音楽が、音楽のほぼすべてになるのか、よくわからない。でもデジタルサンプルを使った音楽はやはり、面白い。ダンスミュージックとしてはもはや、相当追いつめられているのかも知れないし、ここから未だかつて誰も聴いた事のないサウンドを作り出す事も難しいだろうが、そういう事とは別の観点で、やはり面白いと思う。むしろ素材の退屈さ、凡庸さそのものが、それ自体として受容されてゆき、これから人々にとって、作品の「形式」というものが、真に理解されてゆくのではないだろうか。それが愉悦となっていく。それを人々が、生活の中に必須のものとして求め始めるかもしれない。それが実現すると、もはや音楽は音楽自体の独自性を競う必要がなくなるだろう。そんな事も想像したりしつつ、まだまだこれからもしばらくは面白いだろう。


こんな文章を書いているが、実はおとといジミヘンのリスナーズガイド的な本を二冊買って、それを一気読みしていたところである。今まで公式にリリースされたジミヘンの曲はほぼ9割方知っているので、全曲解説を読んでいるのは大変楽しい事なのだが、そういう本を読んでるときにテクノを聴くというのは、とても楽しいことなのだ。なんというか、ジミヘンの場所からみたら、テクノは、ずいぶん遠くまで来てしまった音楽なのだが、それでもブレイクから再びガッ!とキックがよみがえりグルーヴが立ち直っていく瞬間とかを聴いていると、ああ音楽なんて昔から何も変わってない、としか思えないのである。そういう間に、まだ閉じこめられたままなのだろう。


ジミ・ヘンドリックス ─ 全曲解説シリーズ

ジミ・ヘンドリックス ─ 全曲解説シリーズ

 
Jimi-Hen.BON(ジミヘン本)(プリズム・ペーパーバックス 003) (Prhythm paperbacks 3 Junichi T)

Jimi-Hen.BON(ジミヘン本)(プリズム・ペーパーバックス 003) (Prhythm paperbacks 3 Junichi T)