「SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW」 CORNELIUS


SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW [DVD]


2ヶ月以上も前に予約していたDVDがやっと先週届いて、今日観た。音と映像のシンクロ具合は確かにすごく面白いが、基本的に、映像は映像だけで完結した作品という感じであり、あくまでも演奏のBGV的位置づけなので、映像とサウンドが有機的に絡み合ってるという感じはしない。このコンサートの魅力の中核は、あくまでも演奏それ自体の面白さで、SYNCHRONIZEDというのは勿論、音と映像がシンクロしますよという意味ではあるのだろうが、でもやはりコーネリアスはその楽曲および演奏が素晴らしいのだとあらためて思った。


なによりもその演奏の質に大変感動した。4人編成のバンドで、1年のワールドツアーを経た事でメンバー間の息もピークまで合ってる状態なのだと思われ、圧倒的なアンサンブルを聴かせるのだが、でも決して超絶技巧的でもないし、バンドの息がぴったり合ってるときに特有な、バシっ!!と決めるとか、ギャーン!!と盛り上げるとか、そういうのもまるでない。ジャズミュージシャンやスタジオミュージシャンみたいに絶妙な余韻とかタメとかグルーブとかをかもし出す訳では全然ない。普通、ユニゾンとかシンクロなんていうのは、音楽(特にジャズ系)にとっては、もう個人プレイの極北みたいなプレイを聴かせるようなものだろうが、コーネリアスのユニゾンには、そういう感触がまったくない。ライブ的な場の雰囲気に演奏を賭ける部分が極めて冷静に抑制・制御されている。したがって演奏は、曲の表情に関わらず終始淡々としていて、激しい抑揚もなく感情の高ぶりもなく、忠実に楽曲の構造を再現させる事に集中した姿勢で遂行されてゆく。その律儀さや淡々とした雰囲気から素人の演奏を思わせる印象さえある。でもそこが素晴らしい。一年以上のツアーの結果、こういう演奏をするというところがすごすぎる。コーネリアスのコンセプチュアルなところをもっとも強烈に伝えるのは、その演奏姿勢だと思う。「SYNCHRONIZED」というのを、同期とかユニゾンとか、そういう音楽における一時的・意図的な併走運動のようなものと考えた場合、たとえばZazen Boysの圧倒的演奏技術に裏打ちされたユニゾンや、あるいはパヒュームの3人の、ビートとぴったり合ったダンスから織り成される感触と、コーネリアスの音楽が感じさせるものは、まるで違う。コーネリアスザゼン・ボーイズともパヒュームとも違うところは、コーネリアスが「SYNCHRONIZED」をやってる、というよりは、SYNCHRONIZEDとは何か?シンクロさせるというのは音楽にとってどういうことなのだろうか?ということをひたすら淡々と考え続けているかのような演奏のようにも感じるところにあるのだと思う。


実際、これほど斬新な音楽をやっていて、かつ、これほど何の装飾もない剥き出しな質感なのに、これほどポップで楽しいというのは驚くべきことだと思う。単純な面白さとしては、辻川幸一郎のつくる映像が圧倒的にすごい、というのも確かにあるだろうが、でもそれだけではない。