皮膚と秋


大変素晴らしく晴れ渡った空の、美しいお天気の一日であった。日差しは強く、歩き続けていると軽く汗ばむほどであるが、日陰に入るとおどろくほどひんやりとした空気が身体を包み込む。暑いのも寒いのも嫌だけど、暑くなってきた、とか、寒くなってきた、とか、そういう最初の些細な変調が、常に心地よく感じられるというのも不思議なものだ。


皮膚の上を滑ってゆく空気の感触と感じられる温度差が、如何にも秋のはじめの方、という感じがする。熱と冷気が、まだまったく混じり合っていない状態で、日向と日陰の違いにほぼ正確に追従するかのように、あちこちで自らの温度をそのままに保持しつつ凝固しており、暑さと寒さが、まだら状になって偏在しているような感じで、まるで船が水面に大きな裂け目を作りながら行くかのように、自分がどんどん空気の層を切り崩して歩くので、空気は、移動する皮膚の表面を流れ、そこで激しく掻き乱れて渦巻きながら分離していたものたちと混ざり合い一挙に混濁して、季節特有の滋味と香りを瞬時に失って、やがて膨大なグレーの積層となってゆっくりと下方に沈殿して、その堆積を歩行する二本の足が交互に蹴散らしながら進む。