立って眠る


電車の中ではどんなに席が空いていても立っている。なぜなら坐るとあっという間に寝てしまうからだ。しかし今日は眠くてまいった。立っているのにほとんど寝ていた。立ったまま一時間くらい寝た。そんな状態で、ふと目覚めて、隣や向かいの人と目が会う。自分が寝ていたことに気付いて、それに気付く事が目覚める事としてあらわれて、それと同時に、その直前までの自分が、あれ?ここどこだ?と、言っていたような気がして、それに対して、ああお前は、やっと起きたのか。という顔で、脇にいる誰かのまなざしがふとこちらへ向けられる。お互いに近い距離で、さっきからお互いに、ずっとこの場所に身じろぎもせず立っていた二人だったのに、たった今ようやく出会った。お互いの存在に気付いたのだ。いたのかお前。さっきからずっとか。ここに?そうさっきからずっとです。といったやり取りが行われる。無言のままで。