村上春樹


先週から清水俊二翻訳のチャンドラーを読み始めているのだが、主人公のマーロウと友人とのやり取りを始まってすぐ「あ、これってアレじゃないか!」と気付いた。そういえば本屋の棚には村上春樹による翻訳がいっぱい並んでいる事をいまさらのように思い出した。そうかそうなのか…と思いながら読み進めた。要するに僕は村上春樹がチャンドラーやカポーティーやフィッツジェラルドから強い影響を受けているという話を知らなかった、いや聞いたことはあっただろうが、忘れていたので、読み始めて「あ、これって!」と気付いた。そもそも僕は田中小実昌(自動巻き時計)のことを思い浮かべながらチャンドラーを手にとって読み始めたのだ。


今日は本棚の端にあったフィッツジェラルドマイ・ロスト・シティー」(村上春樹 訳)を読んだ。かなり汚れた古本で十年以上前に買って今まで一度も読んだことがなかったもの。なぜ本棚にあるのかも定かではないという。収録されている作品のうち冒頭の「残り火」と最後の「マイ・ロスト・シティー」をを読む。それと前書きとして書かれている村上春樹本人による「フィッツジェラルド体験」も。一冊としてすごく村上春樹の世界に浸りきった感じになれた。


ふだんあまり飲まない種類の酒の、その壜だけをなぜか朝からずーっと飲んでいるようなもので、そのまま「風の歌を聴け」もぱらぱらと見返しているうちに冒頭から読み始めてしまい、結局さっき最後まで読み終えてしまった。何年ぶりに読んだのかわからない。でも再読というか、細かいところはわりとよくおぼえているので三回目くらいかもしれない。でも今回は今までにない位ひとつひとつ、かなり丁寧に読んだ。読み終えて…なるほど、今更だけどあらためてこれは確かに、なかなか、ものすごい傑作かもしれないなと思った。