椿


猫だ。

ごろごろ寝そべって、地面をのたうちまわりはじめたぞ。

これって、私にかまって下さいっていう意味?

わかんない。くにゃくにゃしたいんじゃないかな。

さわったら逃げたね。

うん、やめてよっていう目で見てるのね。

でもずっとこっち見てるね。

空も、あたりの静けさも、まるでお正月みたいね。

いや、でも今年は例年よりもずいぶん暖かいと思う。去年の今頃はもっと寒かったと思うけど。

それにしても、家から駅に行くまでの道のいたるところに、なぜかやたらと、満開の椿が目に付くけど、毎年こんなに咲いたっけ?

うん。濃い緑色の葉を押しのけるようにして赤というよりピンク色の花が。でも、今まで知っていた椿の感じとなぜか微妙に違うようにも感じるな。なんか色が薄いというか。

今年はモミジも、あまり綺麗な色づきではなかったかもしれないね。

そうかもしれない。気温が、それほど低くなかったからかもしれない。

紅葉する前に葉が落ちてしまったような感じがするね。

ところで、図書館の返却窓口は一階だっけ?

そうだよ。私は先に三階に行ってもいいかな?

いいよ。僕は二階で古い雑誌のバックナンバーを開架請求してから行くから。

あ、じゃあ私もやっぱり一緒に行くわ。借りたいものがあったのを思い出した。

返した?あれ、もう借りたの?

うん。あとこれも。

行くか。ところで今日って、12月18日だっけ?

そう。それにしても、本が多すぎだね。本も、録画したままのテレビも多くて、録画はすぐいっぱいになってしまうし、早く見ないといけないのに、全然見ないので困るね。

あとDVDも全然見てないでしょ。見ないと。

でも本屋も寄っていいかな?

いいよ。

今日何食べる?

なんでも。

そういえば昨日またamazonから何か来てたでしょ。

うん。あれなんだっけ。

あ、ビーグルだ。

うん、昔、実家にいたヤツだ。

うん、実家のよりいいヤツだ。

顔まで茶色いヤツだ。

エリマキしてるよ。すごいな。あれって、あんなの首にまかれても犬はぜんぜん嬉しくないと思うよ。

そんなことないんじゃない。暖かいんじゃない?

そんなことないでしょ、犬が、首元が冷えるとか、ないでしょ。

そうなの?

うん、たぶんね。

なんか急に暗くなってきた。


真剣に書いたり聴いたり読んだりすることで時間の流れを少しだけゆっくりにする事ができる。それをしないと、時間はほとんど野放図にひたすら流れていくばかりだ。それはレコードがただひたすら回転し続けて、音楽が流れ続けてしまうようなものだ。