序盤


カポーティ「冷血」を読み進む。今日の夜からいよいよ本題に入りつつある。しかし週の初めから今朝まで読んできた、本題に入る前の延々あった前置きが素晴らしく濃密だったので、出来事がいくつもいくつも積み重ねられていくことで、その人物やそれらを取り巻く環境、時間の流れや空や景色まで、思い浮かぶすべての実在感がはっきりしてくるというのは、じつに不思議なものだと思いながら、ひたすら無抵抗に受容して楽しんだ。触感的な実在感ではなく、気配とか匂いのような感触の増していく有様。これまでの100ページちょっとで、小説的な空間が立ち上っていくことの、基本的な不思議さを味わう。