昔の、まだ戦前とかの時代だと、テレビなどもない時代。たとえば昔の日本映画に出てくるような、そういう風景。今この風景がそうだと思い込んでみる。きっと当時の方が、今よりも、かなり静かだろう。


今だと、窓を開けていると、静かだと思うようなときでも、よく聞いていると、ひたすらずっと、低い唸りのような音がずっとしている。そしてたまに、車の走り去る音。自動車とか、空調の室外機とか、その他さまざまな音がたくさん寄り集まって、鈍い唸りのような中低音になってあたりに満ち満ちている。


戦前はおそらく、こういう音はなかった。ここまで大量の音の寄せ集まりは存在しなかったはず。ふだん、ほとんど意識していないような、いわば聴こえていない音なのだが。聴こえない音が昔はなかった、ということか。


それにしても、音と昔は、漢字が似ているのはなぜか。


実家は今のもう少し田舎で、田畑が広がっていて遠くに国道が走っているようなところだが、だから車の音が遠雷のように一日中響いているのだが。


これもまた、戦前とはまるで違う。


昭和初期、自宅周辺の道。人通りが少ない。音がまったくしない。冬の太陽が地面に降り注いでいる音だけしか聴こえない。