夜になっても、外はまだ、人でいっぱい。誰も家に帰ろうとせず、それぞれがそれぞれの目的や楽しみのために、勝手に、右往左往している。そういう景色を子供の頃に見ると、後にひいて、ああこうして、大の大人が、いつまでも寝ずにじたばたしているのは、なんて楽しい事なのだろうと思ってしまい、それが結局大人になっても直らず、そういう者は夜更かし好きな、夜遊び好きになる。夜遊び好きには二種類あって、淋しいのが嫌いで夜になっても人の近くにいたいタイプと、夜特有の寂しさのなかで、他人と付かず離れずの、ある程度の距離を保ちつつ、しかし完全には姿を消さず、眠らず場にとどまるタイプがいる。後者がおそらく子供時代の思い出をいつまでも忘れられないタイプである。なぜこんな、だるい音楽を、聴くともなく聴きつづけているのか。心ここにあらずの、手持ち無沙汰な態度で、なぜそこに腰掛けて、いつまでも暗闇の先を見ているのか。懐かしい夜の、記憶に残っているともいえないような、かつての思い出があるからだ。