寒い。たぶん今日はかなりの寒さで、通勤電車でもオフィスでも、いつもどおりのつもりだったけど、ゆっくりと気力体力を奪われてしまった感じで、動作も緩慢になり、口数も減り、なんとなく不機嫌になる。ちょっと身体を動かしただけでも、体温が逃げてしまうような気がする。これはもう、真面目に仕事をするしかない。ちょっとでも油断すると、そこから霜が降りそうなのだ。じっさい、それはたまらない。一旦そうなったら、どうしようもないからね。目が霞み、耳がよく聴こえない状態なのだけど、風邪をひいてる人と、仕事が遅い人と、色々どうでもいいことを言ってくる人が、目の前を入れ替わり立ち替わりしていて、自分も、もしかしたら風邪をひいてるのではないか?とも思うような、ぼやっとした気分になりかけたが、とりあえず大丈夫らしい。ところで、検証室を出るとき、閉まりかけたドアを抑えようとして、それが思いのほか勢いと重さが強くて、身体のほうが閉まろうとするドアにもって行かれてしまい、ちょうどあいだを通り抜けようとした女性を巻き添えにした格好で、二人で仲良くドアに挟まった格好のまま、しばらく動けなくなった。ぼくはともかく、その女性は、なんで私がこんなことに、という思いだったろう。でも、とりあえず冷静になってじたばたせず、少し世間話などしながら、周囲の人たちが助けてくれるのを、二人じっとしたままで待った。自由になって、まず先に女性がそこを離れ、続いてぼくも離れた。そのまま、何事もなかったかのようにしてその場を立ち去った。部署は知らないけど6階のフロアにいる人らしいが、次に会ったとき、挨拶すべきかどうか微妙なところだ。