実家に帰って一日母親と我々夫婦とその娘と一緒に。行く途中で酒を買うとき、ある程度実家の近くで買わないと冷えたものがすぐに温まってしまうので、所沢で途中下車して買うことにした。ここ何年かで、このへん沿線の駅とか駅前がやたらと再開発されて、所沢駅なんかにも久しぶりに降りたのだが、駅構内が、ここが所沢駅であるという感じがまったくしない。過去の痕跡が、見事にほんの少しも残っていない。でも駅を出ると、急にいつもの所沢になる。自分が、まだ巣穴の構造をまったくわかっていない新参者のアリみたいな気になる。


さらに地元の駅に着いてから、妹が車で迎えに来てくれて、東口から家まで車で移動したときの風景の変貌にも驚愕する。これはもはや、変貌というのではなくて、上書きといった方がいい。車が出発して、いきなり新しくできた太い道路でぐんぐん下っていく。呆気に取られて見ていて、右の方角に、唐突に出身中学があらわれて更に度肝を抜かれる。大げさではなく、「猿の惑星」のラストシーンと変わらない体験である。自分の知っていたその場所の数々の座標的な記憶が、その中学校の校舎以外すでにすべて実在しておらず、まったく別の地図が覆いかぶさっていて、その上でどんどん新しい出来事が積み重なっているのだ。これはもう、明治時代とか戦後すぐの地図や写真を見て、今の様子と較べているのとほとんど変わらないようなものではないか。なんか、逆に気持ちいい感じもする。いいぞ、もっとやれやれという気になってくる。しばらく走り続けて、家の近くにきたら、そのあたりはまだほとんど昔と変わってないので物足りなくおもったくらいである。


しかし二歳半の姪の子にしてみたら、今の景色が、その後の自分の遠い過去の景色になるのだろうが…。