休日出勤の日。いつもとほぼ同じ時間に家を出る。それでも日曜日というだけで出勤の気がしない。何となく、遊びというか、ただの気まぐれで電車に乗ってるようだ。たまたま、江藤淳「一族再会」の最初の章「母」だけ、久しぶりに読んでいた。この、母親が女学生だった頃を描いている筆致が、かなり好きだ。まるで、赤毛のアンみたいな。それの、悲劇バージョンみたいな。昭和のはじめに、こんな若い娘がほんとうに存在していたのだと、ふとそのへんにさっきまで居たみたいな、息苦しくなるくらいに活き活きとした箇所だ。それにしても、如何にも江藤淳な、この言葉の運び方。すぐそれとわかる音楽を聴いているようだ。