The Police


たとえばP.I.Lを聴いてると、ジョン・ライドンの作品という感じがものすごく、する。だからP.I.Lを聴いてるという感じはあまり無くて、どうしてもジョン・ライドンに、ずっと付き合ってるという感じがある。あるいはジャー・ウォブルにせよキース・レヴィンにせよ、当時のジョン・ライドン・プロジェクトのメンバー、という感じがする。


音楽的には、レゲエ→ダヴで、時代的にもポリスとあまり変わらないのだが、でもP.I.LとThe Policeでは、ほとんど比べる意味が無いほどの違いを感じる。でも、それはなぜなのか。じつは、さほど違わないのではないか、と言っても良いのではないか。でもThe Policeは、メンバー誰かの作品という感じは希薄なのだ。それがThe Policeのすごさで、聴いてるこちらが不安になるくらい、それはその場の化学変化のような、おそろしく行き当たりばったりでそうなったという印象をたたえて並んだラインナップに見える。P.I.Lの場合はほとんど玉砕覚悟で特攻する旧日本帝国海軍という感じもあり、そういうのが妙に古臭いような気もする…というと、ほとんど言いがかりみたいなのだけれど、パンク・ムーブメントのそれはある意味限界で、しかしThe Policeは、本来パンクからこういうことをしたら、本当はたぶん駄目なはずなのに…というところで、スティングという人物の元々の薄っぺらい感じも相まって、まさに突き抜けたというか、こうして人間の歴史は続くのだな、という、あとは僕の世代がよく知る90年代以降の流れになる。僕はあまりそういうのを知らなかったので、それを今さら振り返っているということだが。


もちろんThe Policeなのだから極めて完成度の高い、安定したクオリティの作品群だというのは百も承知だが、でもそれでもやはりThe Policeはごく些細な偶然で、たまたまこうなった、まったくの幸運から生まれたという感じを常に感じさせるように思う。それは何か、それはたぶんバンドと呼ばれる編成の元々持っている実に軽薄で行き当たりばったりな音楽の構成のされ方に由来する。ロック・バンドの宿命というか、たまたまその場にいたメンバーで始まるような、今ある条件からスタートするしかないようなものの、それ特有の質感があって、それが最強の「引き」に当たったときの破壊力。…というような、そのような、どのような意味かわからないけど、とりあえず何しろ、理屈ぬきで、The Policeはすごい。大変なバンドだ。単純に、これはものすごい。スティングもすごいけど、アンディ・サマーズもスチュワート・コープランドも同格ですごい。ポリスというのは、とにかくそうなのだ。メンバー全員すごい。ほとんどビートルズと同格レベルですごい。奇跡的という言葉を使いたくなる。何十年か何百年に一度のスパンで、こういう現象がありうるのかと、不思議に思う。トリオ編成のユニットとしては、ジミヘンドリクス・エキスペリエンスとかクリームとかBBAなんかをはるかに越えた、破格のすごさと言って過言ではないだろう。


まだ演奏を聴いて、うっとりと陶酔しているだけしか出来ないのだけど、今は何しろとにかくアンディ・サマーズのギターの素晴らしさ。あと、曲の良さですかね。なんか、もしこのグループが無かったら、このギタリストがいなかったら、ロック・ミュージックのそれ以降のほとんどの歴史が変わってしまっていたのではないかね。勝手にそんなことまで思い詰めてしまいそうになる。


しょうがないから、今まで興味も無くていっさい聴いてこなかったスティングのソロも少しずつ聴き始めている。こちらはまあ、やや古臭さが否めない感じのものも多い。あと、後期ポリスは、まあたしかにシンクロニシティというアルバムのすごさは、今回あらためて思い知ったというか、すいません今までちゃんと聴けていませんでした、という気持ちになったが、それ以外はさすがにやっぱり今更聴いても古臭いかなあとも思うけど、ひきつづきもう少し聴く。


あと、個人的な思い出として、まだ小学生のときの記憶にぼんやりと残っていた曲。De Do Do Do, De Da Da Daの日本語バージョンを、おそらく35年以上ぶりに、ついにyoutubeで聴くことができた。この曲はほんとうに実在したのだ、僕の勝手な妄想ではなかったのだという驚き。そして、実際に聴いたら最強にカッコ悪い歌だったので、さらに感動した。