水面


水の表面の皺というか、たくさんの溝のところに指で触れてみたいと思って子供の頃によくやったが、当然ながら触れなかった。今も、川の流れの表面を橋の上から見下ろしているときなど、目の前に浮かぶ細かいさざなみのひとつひとつは、それが一本あたりどのくらいの幅なのか、どのくらいの凹凸が連続しているのか不思議に思うことがある。あれも、もしできたら手で触ってみたい。ジャイロコプターに乗って、水面すれすれを飛んで、寝そべって腕を下に伸ばして、川の表面に触る。それでも、さわれないのがあたりまえだ、と断定できないかもしれない。一瞬だけでも、あっと驚くようなはじめての感触が、水の表面ってこうなんだ、とあらためて知ることになるような凄い手触りが感じられるかもしれない。ぼこぼこっといているかもしれないし、ざらっとしているかもしれないし、さらさらと砂の粒子のようなたよりない感じかもしれない。一瞬だけは。そのあと瞬時に、水に戻って、現実に戻るだろうが。そうなればこちらも安心して墜落できるというものだ。