身体


身体がなければ泣きたくても泣くことが出来ない。という言葉もあるが、身体が教えてくれるのは、いつも、遅延の感覚というか、ずれの感じだ。泣く場合なら、泣いたと思ったときと、実際に泣いて顔に妙な熱がこもって表情筋全体がこわばって疲れてくるようなあの感じになるときとは、かなりの時間差があるということだ。僕はそういうときは、それだけ遅い車に乗っているのだと思うし、それだけのずれを無意識のうちに無かったことにして人並みに生きているフリをしているともいえる。いずれにせよ、いつも自分より散歩遅れてついてくる自分の身体についてだ。身体すなわち、現世について、ということだろう。現世への執着、興味だ。