郊外の


都心から電車で一時間も乗って、降りた駅の周囲をふらふらと見渡しながら歩いていると、これは寂れているというより、日曜の午後にしては人がほとんどいないことの方が、如何にも郊外という感じがした。駅前なのにとても静かでものの動きが少ない。ロータリーから、広くて真っ直ぐな道が伸びていて、それが数百メートルほど先で国道に交差するのが見える。その両側には商業施設や店舗が並んでいる、というか、点在している。歩いていると、空き家も多いし、取り壊されて土地だけになっている場所も多い。取り壊しの途中で放置されたような建物もある。なんとなく全体的に、西部劇に出てくる寂れた町のセットを歩いているような感じもする。しかし意外な一角から新興の分譲住宅が広がっているのを見かけたりもする。静かだが、老人も若い人も歩いているのとすれ違う。高校生もいる。車の行き来もある。でもやはり、全体的に静かだ。道が、広すぎるからかもしれない。ここから自分の実家までは、歩いてニ、三十分というところだ。だから昔は、数え切れないくらい何度もこのあたりを歩いているはずである。しかしこうして、久々にその雰囲気を味わっていると、自分も東京に住んで、もうそれなりに長い時間が経ったのだといまさらのように思う。それでもたかだか十数年だけど、今見ているこんな雰囲気のことを、すでにすっかり忘れている。東京と言っても僕の今の住まいなんかはかなり田舎に近いが、それでもさすがにこの雰囲気は無い。今住んでる場所の方が、良くも悪くも、もっと様々な、うごめいているものの気配があると、あらためて実感される。でも僕の物心ついてから二十代の終りくらいまで、僕を取り囲んでいた環境は、まさにこの感じだったわけで、たしかにこうだったかもしれないとも思う。