キルデビルヒルズ


ライト兄弟の飛行写真
http://www.theatlantic.com/photo/2014/08/first-flight-with-the-wright-brothers/100796/


とくに、下の写真が、ほんとうにすばらしい。彼らが手で支えている揚力。たぶん百年という時間とか、生命とか、概念とか構造とかが、その指先に凝縮していて、薄っすらと発光しているのではないのか。過去ではなく未知の時間が。決して明るいものではない、その後の人類の時間全部が。



ノースカロライナ州キティホーク近郊にある砂丘キルデビルヒルズ。彼らが初めて彼の地を訪れたのは、一九〇〇年。ファーストフライトに成功したのは一九〇三年のこと。


彼らの残した写真はどれも見事な出来栄えで、たぶん撮影が上手いというよりも、飛行実験同様、周到な計算と事前準備した上での撮影だったのだろう。


どの写真も、なにしろ砂漠がうつくしすぎる。正直、砂漠という空間を感じさせるために、この飛行物体が写り込んでいるかのように感じられる。砂漠という空間と強風。


写真的な記憶の持ちように対して懐疑的でなければいけないと思っているのだが、しかし、ふと気を許したときに、こういう写真を見ると、仮構された過去の、芒洋とした煙のように立ち上がってくる甘美さに止め処も無く耽溺してしまう。