曇り


光は鈍く色が淡い。空気が冷えている。


art space kimura ASK?で「井上実展」を観る。一見して、想像していたよりも、すっと見えるというか、きれいな印象を受けたが、その場に立って作品を見ているうちに、いよいよ自分の見ているものの先が見え始める。


見ている先のものが何か?色、形、図と地の境目、隙間、絵肌、かすれ、薄さと濃さ、前後関係や重さ、広がり、など、それら一つ一つは順々に思い浮かべられ、あとで記憶のなかに混ざり合う。たぶん全体というのは観念的なものだと思うが、リアルタイムで見ているときにも、一つ一つのものと同じで全体も見ている。ただいずれにせよリアルタイムのときと後で記憶に残るときとではそれは違ってしまうのだが、この絵はそれを見ているのが今なのか後なのかが、渾然としてしまう。やっている方法は、みれば誰にでもわかるようなことで、ただの、キャンバスに絵の具だ。これほど自明なやり方なのに、そのまま、あっけない奇跡のようで、それに対して大げさな身ぶりで驚くというのではなく、目の前に当然のごとく成立しているものをただ受け入れてるような感じになる。このように何の理由もなくまるで人間と無縁であるかのように白々と存在できること自体が、絵画というものの強さだ。


新宿へ移動。久しぶりにスーツを買う。必要なんだからしょうがない。でもお金がもったいない。最近はセパレートが流行ってんのね。ツタヤでロメールとか神代辰巳とか、観たことないやつを借りる。「岸辺の旅」を観て以来、黒沢清大いなる幻影」をひさしぶりに再見したいと思ってたのだが、残念ながら貸出中でがっかりする。


髪を切る。今日ハロウィン見かけました?といわれて、あんまり見かけなかった。そんな格好した子供がいるのを電車の中でちょっと見かけたけど、と言って、そういえば昨日の夜もぜんぜん見なかったけど。へー、渋谷とかあのヘンに居るんですかね?このあたりも別にいませんよね。っていうか、美容院って、ハロウィンの日に仮装の客とか来ないの?と聞いたら、いやいやそれは来ないですね、クリスマスとか成人式は来ますけどハロウィンはまだないですけど、でもあと何年かしたらそうなるかもですね、でもうちの子も保育所で今年はそういうのやるって言われて、簡単なとんがり帽子だけでもいいからって言われて準備するんですけど、そうなると妙に頑張って張り切った衣装になっちゃって、ああノセられてるなあと思いますけどね、まあ子供に着せろって言われたらそりゃあねえ…。


最近、吟醸酒がぜんぜん好きじゃなくなった。酒屋で買うとき「そうじゃない感じのやつ」を教えてもらって買う。野卑でビシっとしたやつの方がいい。ワインは白なら酸の感じられないのはいやだし、赤なら重くないけどふっくらしたのがいいけど、大体そんな感じであれば品種も生産地ももはやどうでもいい。そこそこいいじゃんと思えれば充分で、価格が安ければなおいい。