屋台


景品当方北線。いや、京浜東北線に乗っても、東海道線に乗っても、帰りの時間は同じだと言う。仕方がない。電車の中をうろうろと徘徊した。七両目、六両目、五両目、くらいまでは、普通に乗客がいるが、四両面あたりから、なにやら居酒屋のような匂いが漂っていて、奥のほうには床に座っている連中も何組がいる。三両目はいきなり出店が左右にひしめき合っていて、店と店の間のシートには人々がぎっしりと詰まったようになって、何か得体の知れない湯気の立つものを、大人も子供も手づかみで口に運んでいる。あれだけ手を汚して、その後、どこで拭くつもりなのか。それで、どこで下車するつもりなのか。まもなく上野。上野に到着だ。上野で、どなた様もたくさん降りるはずだ。そしたらたぶん車内は閑散として、もう店じまいかしら。でも僕は食べたくないな。立ち止まっていると、なんだか、妙にものの傷んだような、饐えたようなにおいがして、この匂いはもう、気温の高まってきたしるしだからだ。もう春がきて、不衛生な店は全部、こういう匂いを漂わせる季節がきたのだ。