春前


じっとしているだけのただの休日で、午後過ぎから、少し眠って、また起きて、ただぼんやりとして、夕方になって、地元の駅前のよく行く店の、常連さんの送別会だというので、着替えて出かける。こういう地元居酒屋的付き合いを、自分がするようになるとは、ちょっと前までは想像もしていなかったけれども。でもまだ行く度ごとに、初対面の人も多く、毎回始めましてのご挨拶をしているような、アウェー感とホーム感のまぜこぜ状態で、ともかく飲んでるので、それはそれで、人それぞれで、夜は夜のままだ。終わって一人、白々とした、春のまえぶれのような、何の媚びも色気もない、ただの淡白な夜の下、ぽつぽつと歩いて帰る。見上げたら、黒々とした枝のなか、一個だけぼわっと、まるでちりがみを丸めたようにして、白く光ったように、ひとかたまりの桜の花が、荒涼とした暗闇の一角に咲き開いていた。