自転車通勤


朝、駅まで歩いていると、後からすいすい自転車に追い抜かれる。自転車に乗っている人は、乾いた大気中を、朝の光の中をまっすぐに突き進み、すいすいと遠ざかっていく。それがいつもの朝の景色だ。歩きながら、道の反対側を通る自転車の移動速度に、ときに驚かされたりする。まるで人間が、中腰になって、宙に浮かんだ状態で、空気の上を滑って移動しているように見えることがある。あのペダルの漕ぎ方。あの足の動き方と、後へ流れていく路面の速度が、どうにも、整合が取れてないときがある。下手な合成映像みたいに見えるときがある。いま、君、僕のとこと、違う空間になってんで。いつか、直にそう言ってあげたい。