戸惑い


いつもと変わらないようだが、実はそうでもないのかもしれない。微妙に様子が、表情は笑っているけれども、こわばっているようにも見えなくもない。内心では、焦ってるかもしれない。それでも単純に一枚岩で直線的で割り切り型な、この業界的ON/OFFスイッチ的な人なので、あからさまに戸惑いを見せたりおろおろしたりすることは今までなかった。そういう内面はぜんぜんおもてにあらわさないタイプだったが、しかし現状なぜか、失敗が次の失敗を呼ぶ、悪循環連鎖の罠に完全に嵌っていることには自分でも気付いてるらしく、そのことに対して、やはり焦りの色は隠せないのかもしれない。


そういうことはあるし、実際、大した問題ではないのだ。ただし一度でもそういう経験をすると、身体がおぼえる。そして、以降は用心深くなり、管理策遵守型の人格になる。それは恐怖・不安をベースにした記憶の仕方で、犬が叩かれた過去の記憶をいつまでも忘れられずに、その不安の上で自らの行動を決めるかのようだ。過去に叩かれた記憶が恐怖や不安を生成して、それを元に焦りや戸惑いやおろおろした態度が生み出される。


しかし、不安や戸惑いや恐怖にも、いつか慣れてしまう、というか飽きてくる。