日差し


渋谷のユーロスペースエドワード・ヤン台北ストーリー」を観る。ブレッソンの「白夜」を思い出すような、室内シーンのうつくしい光。時間の進み方の按配というか、リズムのゆったりとした感じ。出来事同士のごわっとぶつけ合って並列的に進めてしまうエドワード・ヤン的な感じ。うわあ、すごいなあ、と思いながら観る。前夜三時間半くらいしか寝てなかったのに、眠さを感じている余裕もない。これは「恐怖分子」の前年に作られたそうだけれども、すでに貫禄があるというか、ゆるぎない自信に満ちた、堂々とした感じで、観ているだけで満足感があった。


その後、土日画廊で上田和彦展「UEDA Kazuhiko Exhibition」へ。日差しの降り注ぐなか、東中野から画廊までとぼとぼと歩く二十分強の時間がなかなか良くて、会場もすごく良い空間。ふつうの日本の家屋を利用した空間なので、壁や天井や床と自分との距離感、作品のサイズ、壁の向こう側や自分の後ろ側との関係が、まさに生活的記憶に重なるような空間であり、そういう場所で毅然と絵画が並んでいるのが、何かすがすがしいような感じだった。線が自らの取っ掛かりを探すかのような、じつに寄る辺ない状態から四辺を模索しはじめるような、それがおそろしく剥き出しな画面内空間に晒されていて、とても気持ちの良い緊張感に満ちた画面だった。


初夏のような暑い日。しかし真夏ほどではない。もし真夏の日々で一日だけこんな気温だったら、今日だけは神の恵み、のように感じるだろう。