また治った


いつもの時間に起きたら、妻が仕事に出掛けるところだった。僕は休みだが、しかし風邪は?昨晩は帰宅後すぐ寝た。それで一夜明けて、今、どうなのか?どんな気分だい?まだよくわからない。というか、別にあわてて起きる必要もない。二度寝した。


ふたたび目覚めたら、十時半くらい。起き上がった。部屋をうろうろする。周囲を見回す。動作のたびに身体の各部位からフィードバックされる信号一つ一つを吟味して、おお、さほど悪くないかもと思う。思ったよりも、元気だ。また治っちゃったのか?なんだかずいぶん、簡単だな。ちょっと、バカなのかな?それでもいい。治ればいいのだ。今日というお休みの一日を普通の体調で過ごす、それだけでどれほど貴重な事か、どれだけありがたいことか、ということだ。


唐突ながら、まずは水泳したいと思った。がーっと泳いで、ある程度の重さの疲労をどすんと身体の中央に置いて、まとわりついているギアの齟齬や動作のぎこちなさを振り払いたかった。午前中のうちにと思って、駅前のジムまで行ったら、プールエリアが老人天国というか老人だけの水泳大会みたいな、ものすごいことになっていて、コースのほぼ全域に水着の男女老人ばっかりぎっしりだった。皆さんけっこう最近の競泳用水着を着てるので、余計にシュールな感じだった。水中から見ていると、明るい光の降り注ぐプールを、老人たちの前かがみになったたくさんの下半身がぴょんぴょんと床を蹴って跳ねたように移動しているのが見えた。…なんか昔、こういうレコードジャケットの写真だかMVだか、見たことが、あったような気がしたけどなあ、とか思いながら、三十分ほど泳ぐ。


プールを出て、さっぱりして、天気も晴れ上がっていて、そのあと結局メシを食って酒を飲むために電車で移動。アミューズ、前菜×2、メイン、デザート。ワイン五杯くらい。夏のプイィ・フュメ、液体の表面が、渾身のちからで夏を反射させていた。温度管理がいい。午後二時前くらいか、ラストオーダー間際の時間になって、学生っぽい男女グループがお店に入ってきた。予約客らしい。若者らしい賑やかさだが、安い居酒屋風な喧騒とかではない、なんかもっと育ちが良いというか、裕福な家のご子息ご令嬢な雰囲気というか、そもそもこんな時間からああやってテーブルくっつけてみんなでランチだなんて、店の奥の方の席で、わいわい喋り合ってる声を聴きながら、なんかエドワードヤンの映画みたいな感じがした。まあ、大企業とかお金持ちの通う大学とか立派な組織団体の建物の近傍にレストランは寄り添ってるんだろうからな。


帰りにディスクユニオンコーネリアスの新譜を買って帰宅。