干されて


一軒目はノンアルコールで二時間、僕は遅れて着いたので一時間弱だが、それだけでも飲まないでその場にいるというのはおそろしく長い。こういう時間を過ごすのははじめてに近い経験で、同席していたいつもの何人かも、いつまで経っても自分が素面であることに、明らかに戸惑っていて、最後は素面のまま謎のハイ状態に無理やり持っていくみたいな、これみよがしに作られたテンションへと変貌を試みたりもしたが、それでもどこまで行っても、かえって素面であるということの事態の変わらなさ、寄る辺無さをかみ締めることになり、お互いに顔を見合わせるみたいな、それを離陸と着陸の失敗に喩えて、延々メタ考察したが、それでもいつまでたっても、今ここにある空しさは、消えることがない。時間が来て解散後、逃げるように二軒目に流れる。皆、シェルターに避難するかのような足取りで。やがていつもの時間と空間の下に着座したらたちまち落ち着きを取り戻して、皆却って無口になり、岩手産の純米酒をあたかも酸素水であるかのように飲み干す。